黙して語らない騎士は心配性。6
それから何日か経ち、掃除の仕方も、生活のパターンのリズムも掴めてきた。
朝は相変わらず起きられない私は、キラさんに起こしてもらっている・・。頭を撫でる行為は・・、直前まで爆睡しているので、さっぱり確認できないでいる・・。
毎日、同じ階の掃除だけなんだけど・・広くって、全部終わると疲労感がすごいんだもん・・。
朝ご飯を食べ終え、キラさんを見送ると、団長さんがやってきた。
「ど〜う?大分慣れた?」
「おはようございます。お陰様で、何とか慣れてきました」
「うんうん、良かった〜。それでさ、前言ってた魔道具できたから、ちょっと3階に来てくれる?」
「・・・キラさんに、危険って言われたんですが・・」
「それ、主に僕が・・って意味でしょ?危険じゃないよ。優しいよ〜。」
「すごく嘘くさいけど、団長さん本人が言うなら、大丈夫かな・・」
「ナルさん、結構言うようになったね」
ははっと笑う団長さんは、確かに美形なんだけど、キラさんや、私をすぐからかってくるのだ・・。そこがな〜・・。
とりあえずちょっとだけ警戒しながら3階に上がり、団長さんの部屋へ行くと、ソファーにもう一人座っている。
「ニルギ、来たぞ」
「おう」
ニルギ・・と言う人は、こちらを見る。
ちょっと癖っ毛ぽい髪に、少しつり目気味のグレーの瞳をしている・・、綺麗な黒猫・・みたいな雰囲気だ。真っ黒いローブを着ているからかな・・。
「初めまして。ナルと言います」
「よろしく、ニルギだ」
団長さんは、ニルギさんに目線を送ると、ニルギさんはローブのポケットから、布に包んである金色のブレスレットを出した。・・・もしかして、これが魔道具なの?じっと見ると、ニルギさんが私を見る。
「・・・あんた、ラトルと結婚しないんだってな」
「えーと・・一身上の都合がありまして・・」
「ラトルが振られた〜って言うから、面白いんでいいと思う」
ニヤっと笑うニルギさん・・。仲良くなれそうだ。横で、団長さんがえ〜ひどくな〜いって言っているが、二人で無視だ。
「わかってると思うけど、これが魔道具のブレスレットだ。手首を出せ」
そう言われて、キラさんの魔法がかけられていない手首を出す。
手首の近くにブレスレットを持っていくと、吸い込まれるように手首にはまる。
「・・・わ・・すごい・・・」
思わずそう言うと、ニルギさんは面白そうにもう片方の手首を見る。
「こっちはウルキラか・・。あいつ、随分強力なのかけたな」
「ね〜!そうだろ〜」
団長さんがニヤニヤしてる。・・・な、なんですか心配性だから仕方ないじゃないですか・・・。
ニルギさんは、団長さんを横目で見つつ、説明してくれる。
「ナル、この魔道具は擬似オーラが出るが、朝晩2回魔力を流し込む必要がある。そこの男か、ウルキラにでも頼め。・・・まぁ、ウルキラが確実か」
「わかりました。・・・外って、出てもいい感じですか?」
「この騎士団の敷地内ならいいだろう・・。ただ、まだ実験の段階だし、外出はやめておけ」
「わかりました。ありがとうございます」
「また、1週間後にブレスレットの具合を見に来るが、何かあれば連絡しろ」
「お手数お掛けしますが、よろしくお願いします」
なんと頼りになるのだろう・・・私は久々に普通に会話ができて、からかってこないニルギさんに感動する・・。うう、普通がこんなに有難いなんて・・!!!
「ナルさん、そのブレスレット頼んだの僕だよ〜?」
「あ、はい、アリガトウゴザイマス」
「金色なのはね、僕の髪の色なんだ〜!」
「ア、ソウデスカ」
ニコニコ笑う団長さんを、ニルギさんとため息をつきながら見た・・。
この人は本当に・・・。




