黙して語らない騎士、記憶がなくても同じ。
キラさんに告白されたけど・・、あれ?記憶はまだ戻っていないんだよね??
混乱した私はキラさんをもう一度見つめた。
「え・・っと、記憶はまだ戻ってないんですよね?」
「・・ああ」
「でも、・・・好き・・?」
「・・・好きだ」
え、ええ・・????
好きになる瞬間とか・・、ありましたっけ?私はちょっとポカンとした。
キラさんはそんな私の顔を見て、小さく笑った。
キラさんは、私の守護魔法の手首をそっと指差す。
「・・多分、前の俺も、相当ナルが好きだったんだと思う」
「そ、うですね・・」
ニルギさんが、魔力に感情も流れるって言ってた事を思い出して・・またちょっと赤くなった。そうですね・・、これ、わかる人にはわかっちゃうらしいですね・・。
それはもう、私が言うのもなんですけど・・、すごく、すごーーーく好きだと思います。過保護だし。
キラさんは、ちょっと笑って私を見つめる。
水色の瞳が、ランプの灯りで小さく揺れて見えた。
「・・・記憶がない、今の俺は嫌いか?」
「記憶がなくても、好きですよ・・・。好きだから・・、忘れられてて、寂しかったですけど・・」
そう言うと、キラさんが嬉しそうに笑う。
ううーーー、その顔は大好きだけど・・辛いんですけど。泣きそうになるとキラさんがそっと目元を指でなぞる。
「記憶はないけど、好きだ」
「そういうの・・ずるいですよ・・」
ぼろっと涙が出て、キラさんがそっと立ち上がると、ちょっと抱き寄せて頭を撫でてくれたから・・、嬉しいのと安心したので、また泣いてしまった・・。
キラさんは、私が落ち着くと安心した顔で私を見つめるので、夫婦なのに心臓がうるさい・・。
「・・・早く思い出せればいいんだが・・」
「なんというか、思い出す前とあまり変わらない感じがしますけど・・」
「・・そうか」
こんな風に抱き寄せてくれるとか、思ってなかったし・・。
安心したら、なんだかまた眠気がやってきて・・うとうとしている私に気が付いて、片付けておくから休むように・・そう言って頭を撫でてくれた。素直に甘える事にした。
「また明日・・」
「あ、はい、お休みなさい」
キラさんを送るために扉を開けると、そういうから・・
なんか、付き合ってた時みたいだなぁ・・って思い出した。
記憶が戻っていないのに、キラさんが好きだと言ってくれて・・、それだけでこんなにも安心してしまう私って、ちょろすぎでないか?・・。そう思いつつ、嬉しくて・・どこかフワフワした気分で眠った。
そうして、翌日・・
身支度して食堂へ朝食を食べに行こうと、寮から出ると、
ドゴォン!!ドゴォン!!と、なんか・・太鼓の音?いや、なんかすごい地響きしてないか??周囲を見渡していると、団長さんが私を見つけて慌てて駆け寄ってきた。
「ナルさん!!!訓練場来て!!ニルギが大変!!」
「え?!ニルギさんが??!」
いつも冷静沈着なニルギさんが大変な事って、一体何が起きたの??!
団長さんの足が速くて、追いつくのに必死だ。
「な、何が起きたんですか??!」
追いかけながら団長さんに聞くと、団長さんが私の足が遅いのを思い出したようにちょっとスピードを緩めてくれた。・・・す、すみません!!
「今、訓練場でニルギがウルキラの特訓をしてる!」
「と、特訓・・?!!だって、あの二人強いじゃないですか・・」
「っていう名目で、ニルギがウルキラにショックを与えて、記憶を取り戻そうとしてる!!」
「あああああ、最終手段にいったんですね!!」
変わらぬのなら、変えてみせようホトトギスとやらか!
まだそこは最終手段って言ったのにー・・!!!
団長さんと訓練場へ駆け込んで行くと、訓練場は穴だらけになり、黒い煙があちこち立ち上っていて・・、団長さんが「訓練場が・・」と青ざめていた・・、その中心で二人は特訓というより、殺し合いじゃないの??っていうくらい睨み合って戦っていた・・。訓練ではないな、うん。




