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黙して語らない騎士に花束を。  作者: のん
黙して語らない騎士と異世界人の日常編。
213/566

黙して語らない騎士、記憶はないけど。


部屋を出て、階段を駆け下りていくとニルギさんがちょうど詰所の玄関の前に立っていた。


「ナル・・」

「ニルギさん〜〜〜」


ニルギさんが、手招きしてくれて・・胸を貸してくれた。


「・・すみません・・、キラさんの方が大変なのに・・、泣いてばっかりで・・」

「仕方ないさ、覚えてる方だって切ない」


そう言って頭を撫でるものだから、涙腺がいよいよ壊れてしまった。

謝りつつ泣いてると、ニルギさんが、



「あいつの頭の上に、石でも落とすか・・」


若干・・、本気で言ってませんか・・?

頑張って鼻をすすりつつ、「それは最終手段で・・」って呟いたら、ニルギさんが可笑しそうに笑った。


ニルギさんだって、心配だろうに・・申し訳ないなって思って、目をこする。


「・・・あまり無理に自分を抑えるな。泣きたい時は、泣けばいい。我慢するのは良くないぞ」

「そうかもですけど・・あ、甘い物、ニルギさんも多少控えて下さいね。」


「それは別だと思うぞ」


ニルギさんが、静かに首を振るから小さく笑ってしまった。


「ラトルに言っておくから、少し休め。嵐以降・・ナルだって休んでいないだろ・・」


「いえ、私は・・」

「団長に代わって言っておく!午後は休め」


ニルギさんが、また頭を撫でるので・・静かに頷いた。


「・・・・すみません、よろしくお伝え下さい」

「ああ、任せとけ」


カタっと後ろから物音がしたので、振り向くとキラさんが心配したのか階段から降りてきた。あ、まずい・・。思いっきり泣いた顔だ・・。慌てて前を向いて、ニルギさんに小さく頭を下げて寮へ向かった。



あ〜〜〜〜、すぐ戻るって言ったのに・・。

結局、逃げちゃいます・・。ごめんねキラさん・・。


ちょっと落ち込みつつ、寮の部屋のベッドに倒れこむ。ニルギさんに言われるまで、そういえば働きづめだった事も気付かなかった・・・。


とりあえず寝よう。

寝てから、明日の事を考えよう。頑張って、明日の私・・。



疲れもあったのか、あっという間に爆睡してしまった・・。


ふと目を覚まして、窓の外を見ると・・真っ暗だ。

今、何時だろ・・。

目をこすって、ランプをつけて時計を探すと7時・・。お昼から随分と寝たな・・。


夕飯・・食べに行くか・・?

いや、食欲がないな。


はぁっとため息をついて、着替えて寝ようと思ってベッドから起き上がると、ドアをノックする音が聞こえた。誰だろ?



返事しながらドアを開けると、キラさんが立っていた。



「は・・え・・??」

「夕飯、持ってきた」

「あ、ありがとうござい、ます・・??」


え、なんで?!

今・・一番会うのが辛い人、ナンバーワンなんだけど・・。

キラさんは無表情のまま、窓際のテーブルに私と・・多分キラさんの分の夕食をのせたトレイを置いた。いや、おくんかーい?!


ちょっと呆然としつつ、キラさんが手招きするので・・ゆっくり歩いて、椅子に座るとキラさんはちょっとホッとした顔で、向かいの席に座った。


「熱いぞ」


そう言って、スプーンを渡してくれた。

ええと・・一緒に食べるって事ですよね・・はい。


鋳物の蓋を開けると、今日はお肉がごろっと入った煮込みシチューだ。お、重い・・。しかし、持ってきてくれたし・・頑張って食べよう。


スプーンでお肉をすくって食べると、口の中でほろっと崩れる。


「・・美味しい・・」


そういうと、キラさんが小さく笑って食べる。

うう・・、その顔は泣きそうになるんですよ。キラさんが私を見る。



「・・最初は、混乱してたが、俺はナルがすごく好きみたいだ」


「・・・・・へ?え、あ、まぁ・・そうですね・・」



って言っていいものなのか?ちょっと顔が赤くなる。

キラさんは、少し躊躇いつつ・・私を見つめると、



「・・・今も、好きだ」


「・・・え、あ、はい・・?あれ、記憶は・・??」



ちょっと混乱して、キラさんを見つめた私の顔はちょっと・・いや、大分真っ赤だったと思う。




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― 新着の感想 ―
[一言] 記憶がなくなっても君を愛する。。。。。( *´艸) いいね゜+.゜(´▽`人)゜+.゜
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