黙して語らない騎士は心配性。5
お昼ご飯はフランさんが持ってきてくれて、それを受け取って部屋で食べる。
ホカホカと温かい具沢山のスープと、ナンみたいなパンだ。
あちこち掃除して、お腹が空いていたので、体に染み渡る・・。
「お、美味しい・・・」
けど、ちょっと一人の食事は物足りないなぁ・・と思う。キラさんがずっと側にいてくれたから、寂しいって感じる間がなかったんだなぁ・・、そう思うと胸が少しちくっと痛む。
色々あったけど、とりあえず頑張ろう。
そう思い直して、スープを食べ始めると、ドアをノックする音がする。
「・・はい」
うん、なんか予感がする。返事をするとキラさんが入ってくる。
はい、大当たり〜。
「・・キラさん、仕事・・大丈夫なんですか?」
思わず聞いちゃったよ・・。副団長って忙しいんじゃないのかい??
「昼休憩だから、大丈夫」
「・・そうですか」
そういって、私の向かいの席に座るキラさん。
この人・・仕事ちゃんとできてるのかな・・、本当に大丈夫なのかな?なんか心配になってきた・・。
「仕事・・」
「はい・・?」
「できそうか?」
仕事初日の私がそんなに心配だったのか・・。
でも、まだ4時間くらいしか経ってないのに、そんな風に心配して見に来てくれるキラさんに、じわじわと面白くなって、
クスクス笑ってしまう。
「キラさんまだ4時間しか経ってないのに、心配しすぎですよ〜」
「・・そうか・・」
「ご心配ありがとうございます。でも、なんとかできそうなんで頑張りますよ。キラさんも午後、頑張って下さいね」
じっとこちらを見ているキラさんを見ると、静かにうなずいた。
良かった・・納得して頂けた。
なんだかんだで話しながら食べ終えると、キラさんが食器を下げるついでにまた仕事へ行くというので、お願いすることにした。
ドアを開けると、キラさんがじっとこちらを見て、
「・・・行ってくる」
「あ、行ってらっしゃい!お皿ありがとうございます」
キラさんがうなずいて、階段を下りていった。・・・うーん、静かなるキラさん・・今日も冴え渡ってる。
掃除の続きをしようかと、振り返ると団長さんが笑いを堪えているのか、手を口に当てて震えて立っている。
「何勝手に見てるんですか・・」
ジトっと横目で見ると、必死に笑いを噛み殺している。全く・・絶対音を立てないように見ていたに違いない。
イケメンなのに残念な人だ・・。
「ごめん、ごめん。ウルキラが面白くって!」
「第一声がそれですか・・・」
「あいつ、仕事してると宿舎になんて一歩も戻らないのに・・って思ったら、可笑しくて・・」
「あ、やっぱりそうなんですね・・。心配して戻って来てくれたのかな・・。なんか悪いなって・・」
「いやいや、心配させてあげて。面白いから」
とうとう堪えきれなくて、笑った団長さんを呆れたように見た。
人の事をそんなに面白がるのは、どうかと思うけど・・。
「あ、そうだ・・。ナルさんね、魔術師の友人に話したら、近い内、擬似オーラが出せる魔道具作ってくれる事になったから、今度出来上がり次第実験してみよっか」
「そんなに早くできるものなんですか?」
昨日の今日で?!話が早いな!思わず驚いてしまった。・・・結婚、早まらなくて良かった・・かも?
と、腕まくりしていた私の手首を団長さんは見ると、それ・・と指差す。
「ウルキラ・・がやったのか?」
「あ、はい・・危険を察知するって言ってました」
「あいつ・・どんだけ・・。まぁ、ナルさん心配なんだろうなぁ」
「結構な心配性ですね」
「まぁ、それだけじゃないんだけどね」
「・・・・はあ?」
見てて?そう言って、私の手首をそっと団長さんが触ると、
バチン!!!と、ものすごい音がして、電気が走ったかのように空気がビリビリと揺れる。
「え?!!」
「ウルキラの守護魔法・・超つえ〜〜、怖え〜〜」
団長さんは、ニヤニヤしつつ手をぶらぶらさせて、指先から出る煙を払う。
「だ、団長さんは大丈夫なんですか?」
「あらかじめ守備魔法張っておいたからね。まぁ、こんだけ守られておけば、当面は安心かな」
「・・・やばい状況って言ってましたね。気をつけます」
「うん、そうしてね〜、じゃあウルキラが来る前に俺は逃げるね〜」
そう言って、団長さんが階段を上っていった途端、キラさんが走り寄って来た。
うーん、ボディーガードがすごい。
ちょっと意識が遠くなった・・・。




