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黙して語らない騎士に花束を。  作者: のん
黙して語らない騎士と異世界人の日常編。
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黙して語らない騎士、緊急事態。


キラさんが記憶喪失になってしまった。


団長さんやニルギさんは、もちろん覚えていて・・、現状を伝えるとすぐに受け入れたらしい。新しくきたラフさんや、ライ君、そして・・私の存在も知ったけれども、私と結婚した事も出会いも、全部忘れていた。



私もショックだけど、周りの人も相当ショックを受けていた。



どうするか・・と団長さんや、ニルギさんと話し合って、しばらく記憶が戻るまで、それぞれ別れて寮で過ごす事になった。急に、記憶がないのに、奥さんだって言われても、きっとキラさんは混乱しちゃうだろうし・・。


ライ君は、キラさんの事を団長さんから説明を受けた時、私よりも辛そうな顔で励ましてくれた。


フランさんは、寮に部屋を用意してくれて・・私の頭をそっと撫でてくれて、また泣きそうになった。



雨がすっかり上がったので、急いで借りていた家から荷物と服をカバンに詰めていく。


デートで貰った花のイヤリング。

キャンプで作ってくれたペンダント。

沢山の写真と手紙。


泣いたら、心配かけちゃう・・と、思ったのにボロボロ涙が出てくる。

思い出ばかり詰まっている部屋を見ると、どうしようもなく泣ける。


起きたらきっと、水色の瞳が私を笑って見てくれると思ったのに・・・・全部忘れてるなんて・・。



「キラさんのバカ・・」



このまま思い出さなかったら、どうしよう・・。

不安ばかりが募ってしまう。


一生懸命、嫌な考えを振り払ってカバンにぎゅっと物を詰め込む。


うん・・、きっとすぐ思い出す!!

そう思って、騎士団に戻り・・寮に荷物を置いてから、執務室へ仕事に戻る。


・・こんなに大変な事態なんだけど、団長さんがまたも書類を出していなかったんだ・・。別な意味で泣きたい。いや、かえって良かったのか・・?



「失礼します、団長さん書類のサイン忘れてましたよ〜」



そう言いながら、部屋へ入ると横のソファーにキラさんとニルギさんが何やら話し合っていた。ニルギさんは、「ご苦労さん〜」と、手を振ってくれたが、キラさんは私をチラリと見ると、またテーブルの上の書類に目を移す。



・・そんな些細な事を気にしてたら、キリがないんだけど・・辛いな。



団長さんに書類を渡すと、自分の作業する机に向かって書類の整理をする。泣きそうになるけど、仕事があって良かった・・。書類をまとめると、午後は炊き出しの手伝いで食堂だ。


いつもだったら、お昼はキラさんと食べるけど、今日は執務室で缶詰になっている団長さん達にフランさんと食事を届けてから、私は食堂で一人で食べる・・。



「・・・・・食欲、わかない・・」



そういえば、キラさんがあの綺麗な顔で、バクバク食べるからつられて食べてたな・・って、思い出した。せっかく作ってくれたものだから、残したくないけれど・・食べきれない。


はぁ・・っと大きくため息が出て、ぼんやりと外を見ると、嵐が過ぎ去った空はキラさんの瞳のように綺麗な青い空だった。・・どこを見ても、キラさんを思い出しちゃうなぁ。


申し訳ないけれど、サンドイッチ・・一つ包んでもらって、あとで食べよう。



そう思って、カウンターへ向かおうとするとキラさんは、みんなの食べた食事の籠をまとめて持ってきて片付けていた。あ、偉いなぁ・・自分も大変なのに・・。


そんな事をぼんやり思いつつ、私はカウンターに籠を置いてキラさんを見つめた。


「お疲れ様です。お仕事、慣れましたか?」


キラさんは、ちょっと目を丸くして・・


「ああ・・」


そう言うから、いつもの返事だなぁって思って小さく笑う。


どんな人にもキラさんは、同じように返事するな・・、記憶はなくてもキラさんは、キラさんだ。その事実に、ちょっと安心した。


ペコっと会釈して、食堂の調理場へ入っていく。

・・そういえば、野菜食べたかな・・と、ちょっと思いつつ。




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