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黙して語らない騎士に花束を。  作者: のん
黙して語らない騎士と異世界人の日常編。
205/566

黙して語らない騎士、怪我を負う。


次の日、団長さんの言う通り雨が降り出し・・、今日は土砂降りだ。


明日、嵐が本番だというのに、今からこれでどうするんだろう・。

ニルギさんも寮に泊まるためにやって来たが、濡れたくないからと転移して執務室へきた・・。ちょっといいな。


クリスさんとノーツさんは、手分けして港周辺の人を高台の避難所に早めに避難してもらったようだ。さすが!防水処理をしっかりと施されたレインコートを着て、騎士さん達や警備団の人達と、見回りをしてきたらしく・・、食堂の入り口でびしょ濡れになりながら帰ってきた。


「お疲れ様です!食堂の中で、休憩して下さい」


私とライ君で、騎士さんや警備団の人に声をかける。

みんな、ビショビショなのでタオルがいくつあっても足りないな・・。渡していくと、ホッとした顔で受け取っていく。


団長さんが、レインコートを羽織って食堂へやって来る。


「クリスとノーツは?」

「中で今、休んでもらってます!」

「ありがとう」


そういって、団長さんもクリスさんとノーツさんに見てきた様子を聞きに向かう。団長さん、大変だな。



外を見ると、風がごうごうと音を立て・・食堂の外に立っている木々が大きくしなっている。そんな様子を見るだけでドキドキしてしまう・・。キラさんは、クリスさん達と交代で、外の見回りか・・。



大きな事故がないといいな。



外の様子を見ると心細くなるけれど、まぁ・・キラさんだし、きっと大丈夫かな・・そう思って、水浸しの食堂の入り口の床を、ライ君とモップで拭く。


「よし、床も綺麗になったし・・、一旦執務室へ戻ろっか」

「そうですね。あと一時間したら、ウルキラさん達が戻ってくるんですよね?」


「そうそう・・、その時にまたここへ・・」


そう言いかけた時、ものすごい風が吹いたのか、



バン!!!!



と、窓が大きく音を立てて、私とライ君は思わず体が跳ねた。



「お、驚いた〜〜」

「すごい強風でしたね・・・、何か落ちてないといいんですが・・」


「あ、そうだよね。シーヤの家って瓦だしね・・」

「最近は、看板を出す店もありますしね・・、ちょっと心配です」



ああ、あれは確かに怖いなぁ。

私が住んでた所でも、よく吹っ飛んでいたもんな・・。


そうして、二人で大急ぎで執務室へ走って戻る。風は、どんどん強さを増して、雨は窓を叩きつけるように降っている。フランさんがニルギさんと、嵐の状況を王都から連絡をもらって、地図を見ながら話していた。



「どうも動きが早いようだな・・。いまがピークかもしれない」

「そうなんですか?!キラさん・・、大丈夫かな・・」


不安そうに窓の外を見るけれど、今、外へ行っても足手纏いになるだろうしな・・。


ニルギさんは、私とライ君を見て、


「そろそろ食堂へ行く時間だが、転移で行こう。すぐそこだが危ない」

「すみません・・、お願いします」


この雨と風だと、絶対転びそうだし・・、遠慮せず転移してもらおう。

私とライ君はニルギさんの側へ行き、食堂の入り口へ転移してもらった。べ、便利だな〜・・、そう思っていると、突然食堂の扉が勢いよく開いた。



「た、大変です!!ウルキラさんが怪我をしました!!」



青い顔をした騎士さんが駆け込んできて、一瞬耳を疑った。

え??キラさんが?!

思わず体が固まった私に変わって、ニルギさんが騎士さんに話を聞く。



「今、どこにいる?!」

「詰所前まで、なんとか運んで来ました!看板にぶつかりそうになった騎士を庇って・・、頭を負傷してます!」


「すぐ行く!!ナル、ラトルに連絡!!」

「は、はい!!」



私は、食堂の中へ入る団長さんに報告しに行くと、団長さんも慌てて詰所の前まで走って行った。



足がすくんで、うまく動けないけれど・・、とにかく医務室へ運び込まれたキラさんの様子を急いで見に行くと、真っ青な顔で頭に包帯を巻かれて寝ているキラさんを見て、思わずへたり込んでしまった・・・。




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