黙して語らない騎士は心配性。4
キラさんは食べ終えると、食器をまとめている私をじっと見て、
「後でフランが来る」
「あ、はい」
「仕事は、無理しなくていい」
「はい・・?」
「フランは、無理させるから・・」
要するに心配なんですね・・。
言葉!!圧倒的な説明不足!!・・しかし、キラさんだから仕方ない。
私はヘラっと笑って、
「心配してくれて、ありがとうございます。これでもバイト・・あー、ちょっとお仕事もやってたんで、大丈夫だと思います。ただ、無理はしないようにしますね」
キラさんは、仕事・・と呟いて、ちょっと驚いていた。
うん、私、20歳だからね。大人だからね。
思わず、
「キラさんは心配性ですね〜」
そう言うと、キラさんは少し目を丸くする。あくまで少しだ。
「・・心配だ」
静かに呟くキラさんに、またヘラっと笑いかける。
「ありがとうございます。何かあった時は相談しますから!」
「ああ」
ようやく納得してくれたのか、キラさんは静かにうなずく。
この騎士さんは本当に面白いな!
キラさんは私のそばへ来て、手を出す。握手したいの?
「えーっと・・・?」
「手首を出してもらっていいか?」
「あ、はい・・?」
私は手首のボタンを外し、キラさんの前に出すと、キラさんは私の手首を一周するように指でそっとなぞる。と、その指先から淡い光が出て、手首にブレスレットのように銀色の模様が入る。
「え?コレなんですか?」
「魔法」
「いや簡潔すぎ!なんの魔法ですか?」
「危険を察知してくれる」
「あ、ああー・・なるほどぉ・・?」
まだ心配なのかい・・。キラさんの中で私はどんだけ危なっかしそうに見えるんだろうか・・。キラさんは、まだこちらをじっと見ている・・。
「このまま仕事に行くんですよね?」
「ああ・・」
「そっか、じゃあいってらっしゃい!また夕食、食べられるようなら、一緒に食べましょう」
キラさんは静かにうなずいて、ようやく出て行く。
いや本当・・どんだけ心配性なんだ!!!
私は一つため息をついて、窓を開けて換気がてら外を見る。ちょうど私の部屋から、訓練場・・だろうか、レンガでできた建物が見える。そこへ剣や弓を持った人達が歩いていくのが見えた。あそこで訓練するのかな・・、ちょっと興味津々で見ていると、綺麗な銀髪が歩いている・・・。キラさんだ。
上から見ても、綺麗な銀髪だなぁ・・サラサラしてるわぁ・・と思っていると、キラさんがこちらを見て、小さく手を振る。・・・可愛い・・思わずそう思いつつ、こちらもそっと手を振ると、また訓練場へ歩いていった。
なんか・・・面白くて、優しくて、可愛いな。
キラさんへの印象の単語がまた一つ増えた。
窓を閉めると、ドアをノックする音が聞こえて、返事をすると外からフランさんの声がする。
「おはようございます、フランさん」
「はい、おはようございます〜。さ、じゃあお仕事やりましょっか!」
「はい!よろしくお願いします」
元気に返事すると、フランさんはニコニコ笑いつつ、素早い動きで掃除用具のしまってある場所、掃除する箇所、使う道具を説明してくれる。は、早いーー!覚えられるかな・・。
「まぁ、すぐ出来なくても大丈夫です。徐々に慣れていきましょう〜。今日は僕も一緒にやりますから、頑張りましょうね」
「ありがとうございます!頑張ります〜」
思わずフランさんと同じような口調になってしまった・・。
いかん、いかん。気を引き締めて掃除するぞ。
フランさんは、のんびり口調とは裏腹に、鮮やかな手さばき・・でなく、掃除さばき(?)をしていく。まじすげえ。
2階のフロアを手分けして、掃除していくが・・コレ、終わんの?ってくらい、部屋が広い!多い!!え、絶対これキラさん全部使ってないと思う・・。このフロアをその内、一人でやるのか・・・、ちょっと目が遠くなる。
ようやく半分の部屋を掃除し終えると、カーンカーンと鐘の音がする。
「あ、お昼ですね!一旦休憩しましょう」
にっこり笑うフランさんの一言で、ようやくホッとした。
あー!!お腹空いた!!返事するようにお腹がぐうっと鳴った。




