黙して語らない騎士、団長補佐仕事2
騎士団の執務室へ慌てて戻ると、ニルギさんはいたけど、キラさんがいない・・。
「あれ・・?キラさんは?」
「ナルの指示があったから、出かけたぞ?」
「指示してませんよー!あ、でも良かった・・連絡通じたんですね・・」
ハアハアと息がなかなか整わない。
ニルギさんにお財布とケーキを渡すと、ニコニコして受け取って早速中身を見る。甘いの・・本当好きだよね・・。でも、今はニルギさんがいてくれて、ちょっと安心する。
ニルギさんの座っている向かいのソファーに座って、大きく息を吐く。
「団長さん、そういえばこういう事態の時、素早く動いてましたね・・」
「あいつも、結構働いてるだろ?」
「・・しょっちゅうサボってる事は、今回ちょっとバレましたけど・・、安心感はすごいなって思いました」
そう言うと、ニルギさんは面白そうに笑う。
「ウルキラも、また違う立場になって色々発見があるだろうな」
「ああ、そんな事言ってました・・」
お父さんは、本当にキラさんが可愛いんだな・・。
窓の外を見ると、大分日が暮れてきた。
「・・見つかると・・いいですね」
「そうだな。ガダに逃亡しようって魂胆らしいからな」
「え?あそこはティルが手を入れたんじゃないですか?そこに行ってもどうにもならないんじゃ・・」
「残党はいるさ。ティルと仲の良いファントを狙ってるんだよなぁ」
胸ポケットからフォークを出して、ケーキを食べ出すニルギさん・・。
こんな時でも、甘い物を欠かさない・・もう天晴!!
「・・・なかなか仲良くいかないんですね」
「ティルは、大分落ち着いたがな・・」
と、フランさんが駆け込むように執務室へ戻ってきた。
「あ、良かった!ニルギさん情報掴みました!キラさんに連絡お願いします!!」
「はいはい」
ニルギさんは、自分の手の甲を指でそっとなぞると、淡い光と共に模様が浮かび上がる。あ、私と同じやつ!フランさんが、メモ用紙を渡すと、
ニルギさんは手の甲へ向かって、
「隣の町で、紺色の小さめの漁船、赤い線が入っている船を追え」
そう言うと、ニルギさんの手の甲が淡く光った。
それを見て、また一口ケーキを食べた。
「返事が返せるように、今度術式を改良するかな・・」
うーん、マイペース!!
フランさんと目を合わせて、思わず笑ってしまった・・。
「夜食でも、食堂に頼んできましょうか?」
私がそう言うと、フランさんが頷く。走ってきたので、ちょっと苦しそうだ・・。わかる!さっきの私もそうだった・・。食堂へ行くために、詰所を出た時・・、ふときな臭い匂いがする・・。
あれ??どこから??
騎士団を見ても、変化はない・・。
気のせいだった・・?
すると、住民の人が騎士団の方へ走ってきた!
「あ、ちょっとアンタ!騎士団の関係者か?港の方で、火事起きてるらしいよ?!」
「え?!!」
慌てて、港の方を見ると・・、確かに黒い煙が上がっている!!
「ありがとうございます!!すぐに向かいます!!」
そういって、また執務室へ駆け上がって行く。うう〜〜!!今度絶対、体を鍛える!!ドアを勢いよく開けて、ニルギさんとフランさんに言うと、フランさんが騎士さん達と、警備隊に声をかけに行ってくれた。
ニルギさんは、港を見て・・
「気付かれた事を知って、火をつけたか・・」
「え?そうなんですか??」
「こっちが手薄なのを知っているからな・・」
く、悔しい!!
もうどうして、そんな事をするんだろう!?
火事・・、どうすればすぐ消せるだろう・・。ええーい!!そんな事考えてる暇なんてない!!
「火事の様子見てきます!!」
「ちょ、ナル!!」
慌ててニルギさんが呼び止めたけど、港まで駆け出して行く。もう何かしてないと、落ち着かない!!