黙して語らない騎士は心配性。3
お風呂に入って出てきたら、一気に眠気がやってきて、髪を何とか乾かしたら、倒れこむように眠ってしまった。そうでした‥今日も色々あったんだ。
そうして、トントン・・と音がして、意識がふわりと覚醒する。
朝・・・?
薄っすらと目が開いて、近くの窓を見るとカーテンの隙間から、日が昇る様子が見えた。と、ドアが静かに開き、何となく目を閉じてしまった。・・キラさん、起こしにきてくれたのかな・・・。
目を覚ましてしまったけど、お願いした手前、何となく起きづらくて寝たふりをする。
すぐ肩をトントンと叩くかな・・、そうしたらすぐ起きよう・・そう思っていたのに、手は肩でなく、頭に置かれて・・そっと優しく撫でる。・・・あれ?頭撫でてる・・・?
何度か頭を撫でると、手は肩に置かれて、いつものようにトントンと叩く。
「・・・ナル、朝だ」
私は、今起きましたよ〜とばかりに、目をギュッと瞑ってから、開ける。
体をゆっくり起こしつつ、毛布を体に巻きつける。
「・・・おはようございます」
「おはよう」
「・・起こしてもらって・・、ありがとうございます」
ペコっと座ったままお辞儀をすると、頭に手をポン・・と置いて
「ああ」
そう言って、部屋を出て行く。
私は、なんというか・・キラさんの一連の行動に気恥ずかしい気持ちでいっぱいで・・、すぐに体を動かせなかった。えーと・・あれは、なんだったのかな?こんな小さい子が働くの大丈夫かな?的な??
「・・・そういう事だろう・・」
ポツッと呟いて、ようやく納得して体を起こし、着替える。
洗面所で顔を洗って、髪をお団子にする。
掃除係だし、邪魔になっちゃうのもね・・。
そうして、洗面所から出てくると、またドアがノックされるので、返事をするとキラさんがトレイに朝食を持ってやってくる。昨日は甲冑を身につけていたけれど、今日は騎士団の制服なのだろうか・・紺色の詰襟のジャケットを着ている。銀髪に大変映えていて、格好いい事この上ない。朝から眼福だな・・。
「ありがとうございます!」
「ああ」
私はドアを大きく開けると、入ってきたキラさんは、静かに朝食をテーブルに置く。
もちろん2つ分ですよね。キラさんと私の分ですよね。
そして、椅子を引くので、ペコッとお辞儀しつつ椅子に座ると、キラさんも向かいの席に座る。今日の朝食は、朝早いにも関わらず、トーストとベーコンと目玉焼きだった。うわ〜〜!!!馴染みのあるビジュアル!!
「わ、美味しそうですね!」
「・・食堂のは美味しい」
「そうなんですね。確かに昨日のシチューも美味しかったです!」
「・・そうか」
そう言いつつ、手を合わせてから食べ始める。
「うう〜〜、朝から美味しくて幸せだ〜」
「そうか」
キラさんは、今日も少し長めの前髪から嬉しそうな水色の瞳でこちらを見る。そうすると朝食の美味しさで、一旦忘れていた朝の一連の流れをふと思い出して、何となく照れくさくなってしまう。
そんな気持ちを誤魔化すように話しかける。
「キラさんは、仕事ってどういう事をするんですか?」
「魔物が出れば討伐。」
「とうばつ・・」
「戦争が始まれば戦場に行く」
「せんじょう・・」
「今は平和だから、騎士達を訓練してる」
「・・良かった・・平和で」
お世話になった人が、討伐やら戦場に行く・・なんて聞いたら、ちょっと心穏やかではいられない・・。ひとまず平和そうで何より。
「っていうかキラさん訓練する側なんですね〜。キラさん強そうだもんね」
「・・・まぁ少し」
「え?でも団長さん、すごく強いって言ってましたよ?」
「・・・あれは信じなくていい」
無表情だけど、ちょっと嫌そうな顔になった。
・・キラさん、よっぽど嫌いなんだろうなぁ・・。