黙して語らない騎士、お化けが出た?
新人騎士さん達の地獄の特訓は、凄かったらしい・・。
ラフさんが止めてくれて、生き残った・・と騎士さん達が語っていたけど・・、私ほどほどにって言ったよね?
食堂からお昼を貰って、いつものように木陰に行くと・・あら、今日は先客がいた・・。
新人の騎士さんだろうか・・、
確か一番最年少の子だったかな。濃い茶色の髪をした男の子は、ぐったり寝転がっていた。
「こんにちは、訓練お疲れ様です!お昼・・食べられそう?」
「あ、こ、こんにちは・・大丈夫です。ただ眠気がすごくて・・」
「眠気・・?夜、遅かったの?」
「・・違うんです。夜は疲れてすぐ寝るんですけど・・、寮にお化けが出るんで・・寝られなくて・・」
お化け?!私も住んでたけど、そんな話聞いた事ないな?
「お化けって・・、どんなの?」
「夜中に寝てると、あちこちからうめき声が聞こえてきて・・、なんか気になっちゃって起きちゃって・・そうなるとなかなか寝られなくて・・」
男の子は、足を抱えてしょんぼりしてるから・・なんだか可愛いなぁってつい思ってしまう。
「夜かぁ・・、先輩騎士さんに相談した?」
「それが、寝とけ!!で終わっちゃって・・」
ものすごく目に浮かぶ。
とりあえず寝ておけば平気だろ!!みたいな姿しか見えてこない・・。どうも聞くと、他の子も聞こえて怖がっているらしい。強くてもお化けが苦手ってちょっと可愛いな。
「そっか〜、じゃあちょっと上の人と相談しておくね」
「ありがとうございます!!」
そんな話をしていると、キラさんがやって来て・・お化けよりも怖いのか男の子はダッシュで食堂へ行った。頑張れ。
ちょっと不思議そうにしていたが、私が手を振るといつものように嬉しそうに見つめてくる。
昼食を食べつつ、キラさんにふと聞いてみた。
「キラさんは、寮に住んでた時お化けにあった事・・あります?」
「お化け?」
「なんか寮で出るそうです」
「・・・・覚えがないな」
「そうですかぁ・・、じゃあ最近なのかなぁ〜・・」
うーん、お化けってニルギさんは退治できるかな?あれ、分野違い?
キラさんは少し考えて、私をじっと見つめる。
「・・・・ナルはお化けは苦手か?」
「うーーん・・・・、私、霊感って言ってお化けをみる力みたいなのはないので・・、わからないんですけど、いきなり出てきたらやっぱり怖いし、びっくりしますね」
「・・・そうか」
キラさんが寮をじっと見つめる。
「・・お化けは、剣では斬れないですよ?」
そういうと、キラさんは少し笑って頭を撫でる。な、なんか子供扱いしてませんか?
「寝不足で訓練は危険だからな・・、騎士達に声をかけておく」
「なるほど・・ありがとうございます!」
キラさんは静かに笑うと、また頭を撫でてきた。
なんか・・子供じゃないんですけど・・。
昼食を片付けて、執務室へ戻ると団長さんがもう仕事をしていたので書類を整理しつつ、お化けの話をすると、
「あ〜〜〜、ナルさんも聞いた?お化けねぇ・・僕、そういうのわからないからなぁ・・」
「ナルさんは?」
「私もさっぱりなんですよねぇ・・」
ライ君とフランさんも戻ってきて、お化けの話に参加する。
「そうですね〜、僕も寮に住んでいるけれど、そういった声が聞こえないんですよね〜」
「そっか、フランさんは寮に住んでましたね」
どうも深夜に出るらしい・・。
「・・・うーん・・、じゃあ私とりあえず寮長さんに書類渡すついでに、ちょっと見てきます」
「は〜い、気をつけてね」
団長さんは、ひらひらと笑顔で手を振る。
気楽なもんだ・・。まぁ、こんな昼下がりに出るわけないしな・・。そう思って、寮長さんに書類を渡して、寮のなかをぐるっと回ってみる。
いつもの風景だよなぁ・・。
掃除道具の確認もしようとして、倉庫の扉を開けた途端、
低い・・何かが這うような声がして、ビクッと体が跳ねる。
ウォ・・オ・・オォ・・・
背筋がぞくっとして、急いで倉庫を出た。
ええええ、本当に本当に出たの???!急いで執務室へ走って団長さんに言ったら、すっごい笑われた。めちゃくちゃ笑われた。本当に出たのに!!!