黙して語らない騎士、王都へ行く。20
ひとまず祝賀会の方へ、流石に主役なので少し顔を出す事になった・・。
えーー、もうお部屋行きたい・・。
ニルギさんは、ニヤニヤしながら一緒に行くけど、絶対面白いからでしょ。
キラさんやオルク団長さん、ニルギさんが会場へ入ると、一気に注目が集まる。お、おお・・すごいな。
女性陣が、キラさんにそそっと近寄って、さっきのルーンさんを庇った話をしては褒めまくってくる。私、完全にモブかい。お飾り?お寿司の横についてるバランかもしれない。
ちらっとキラさんを見上げると、無表情なんだけど不機嫌全開のキラさんがいる・・。嫌なのに、ニルギさんに「みんなを安心させる為にも、顔だけは出しなさい」って言われたからなぁ。意外にニルギさんの言う事は、ちゃんと聞くんだよね。とはいえ・・これじゃあなぁ・・。
くいっと、キラさんの袖を少し引っ張ると、キラさんがこちらを見る。
「・・キラさん、ちょっと飲み物貰ってきません?」
「・・ああ、失礼」
そういうと、さっと私の腰に手を添えて、飲み物が置いてあるテーブルへ行く。
「キラさん、大丈夫?」
「・・・・・少し」
大分、嫌そうだ。
言いつけたニルギさんは、美味しそうなスイーツに舌鼓を打っている。・・横で女性達が果敢にアタックしてるけど・・、その人、今スイーツにしか目に入ってませんよ。
キラさんが、グラスを一つ取ってくれて飲むと、口当たりがよくて美味しい!
喉も渇いてたのか、ぐーっと一気に飲み干してしまった・・。
「キラさん、これ美味しいです!」
「そうか・・」
キラさんも、一口飲むと、ハッとして私を見る。
「・・・ナル、大丈夫か?」
「へぇ・・・?」
あ、なんかこれ・・さっきのふわふわする感じのだ。
アルコール入ってたのかな?
顔が熱い・・・、あちゃー私、アルコールに弱いのかな・・?でも、ふわふわした気分は気持ちがいいので、同じグラスをテーブルからとって、また一口飲む。
「うふふ、美味しいですね〜、これ!」
ほわっと顔が緩むと、キラさんが私を凝視している。
・・なんか、いつもよりじっと見つめるな。
「・・キラさん?」
「・・・ナル、戻るぞ」
「ええ〜〜、今来たばっかりですよ?キラさん、ニルギさんに怒られちゃいますよ」
キラさん、ぐっと詰まると私を少し拗ねた顔をして見るけど、ダメでしょ?安心させてこないとなんでしょ?私は、もう一口飲むと、ふわふわするのでちょっと楽しい。
お酒、今度家でも飲んでみよっかな・・。
「ほら、とりあえず一緒にぐるっと回りましょ」
「・・・・・・・・・わかった」
キラさんは、ぐっと自分のグラスのを飲んで、私のグラスのも取って飲んでしまった。あ、ああ〜・・美味しかったのに。
私の腰に手を添えて歩くと、周囲の人が声を掛けてくる。
一斉に・・じゃなくて、良かった。
ふわふわした頭で、なんとか返事したり、笑ってみたけど・・、あかん・・これ酔っ払ってるなぁ・・。
キラさんが話しかけてくる人達に短く返答してるけど、キラさんの低い声を聞いていると眠くなってくる・・。いかん、睡魔と酔いに負けそうだ!そう思っていると、キラさんが私を見る。
「・・・?キラさん??」
「眠いか?」
「・・・・・バレました?ちょ、ちょっと・・・?」
キラさんは小さく笑うと、向こうで面白そうに見てたニルギさんにキラさんが目配せしたのか、小さく手を振るので私も手を振って部屋へ戻る。
「キラさん・・、ごめんね・・、お仕事しなさいって言っておきながら眠くちゃった。お話とか十分できた?」
「大丈夫だ」
長い廊下は、月明かりとランプに照らされて・・
ちょっと薄暗いけど、なかなか綺麗だ。
外からは街並みの明かりも見えて、ちょっとシーヤに似ていて、なんだか懐かしく感じてしまう。
「綺麗ですね・・」
街並みを見て、そういうとキラさんが腰を引き寄せて急にキスしてきた。
「き、キラさ・・・」
「ナルの方が綺麗だ」
「・・・そ、そういうのは、二人の時・・、あ、今二人でしたね」
そういうと、キラさんは笑ってもう一度、今度は静かにキスしてきた。
・・・ま、お仕事も終わったし・・いいかな。
照れくさいのと、恥ずかしいのと、あとちょっとやっぱり酔っていたんだと思う。甘い空気をそれなりに堪能してしまった。