黙して語らない騎士、王都へ行く。15
うっかりルーンさんにからかわれて、キラさんの警戒レベルが上がってしまった・・・。
ニルギさんに「落ち着け」って言ってもらって良かった・・。
お茶会で、お昼もなんとなく済ませたのでキラさんと部屋へ戻る事にした。ニルギさんは、オルク団長さんと、今度の遠征の話もしたいそうで、騎士団へ一緒に行った。お仕事熱心だなぁ・・。
侍女さんに案内されて、自分たちの部屋へ向かう途中、渡り廊下から外の城下町が見えた。
シーヤとはやっぱり規模が違くて、結構遠くまでお屋敷や家が沢山の並んでいる。奥の方に霞むように森が見える。
「・・・・やっぱり、景色が全然違いますね」
「そうだな」
「キラさん、王都で仕事した事あるんですか?」
「・・研修で来て以来はないな。騎士団で相談にきたり、勲章をもらう時は来たが・・」
「研修・・、キラさんが研修・・」
昔、経費で落ちるって言われた時以来の違和感だ。
思わず小さく笑ってしまった・・。
「王都って、綺麗な所ですね、街の方って今回は歩く暇はなさそうだけど・・、ニルギさんの転移の魔法があれば、観光にまた来れますかね?」
「・・観光」
「・・ほら、あまりシーヤ以外の都市とか行った事、ありませんし・・」
「帰ったら、どこか出かけよう」
キラさんが、私に笑いかけるので、私も笑って頷いた。
やりたい事、いっぱい溜まっていくばかりだなぁ・・。馬に乗りたいし、キャンプもしたいし、川でピクニックに・・。こなせるのかなぁ〜・・、キラさん忙しいのに。
部屋へそんな事を考えたら、あっという間について、二人になると知らず息を吐く。
私とキラさんとでソファーに隣同士で座ると、キラさんがそっと抱きしめてきた。ちょっと照れ臭いけど、今は大分落ち着く。人の目に晒されるって、結構精神的に疲れるんだなぁ・・。
「ナル、大丈夫か?」
「・・・いやぁ、団長さんやキラさんが、こういった場に出るのを嫌がるのよく分かりました・・。結構、見られるだけで疲れるものですね・・」
キラさんの胸にちょっと顔をすり寄せると、キラさんがそっと頭を撫でる。あ、気持ちいい・・。これ、相当疲れてるな。
「キラさんいてくれて・・良かったです」
「ああ」
「・・・・あと、夜だけですし、頑張りましょう・・」
「楽しみだ」
「・・・・キラさん、かつてないテンションですね」
ちょっと顔を上げて、キラさんを見上げる。
いつもは「嫌だ」「断る」とか一刀両断なのに・・。あ、でもそれは団長さんにだけか。
「ドレス・・は、どこに?」
「あ、侍女さんがそこに置いていってくれ・・・あ!!!ちょっと待った!!」
キラさんは、さっと立ち上がって、ドレスの確認に長い足でさっと確認しに行った。やばい〜〜、疲れてて、すっかり意識が緩んでた!!キラさんの剣の錆が増える!!
キラさんは、置いてあるドレスを確認すると、私をじっと見る。
う・・・、やばい・・、思わず目を、そろ〜っと横にそらす。
「ちょ、ちょっと・・ジュースをですね・・、はい、掛けられちゃったみたいな・・?」
キラさんの背後から、どす黒い圧というかオーラが出ている気がする・・。
めっちゃ怒ってますよね、無表情だけど・・。
キラさんは、ドレスの汚れにそっと手の平を這わせると魔法なのだろうか、跡形も無く綺麗にしてしまった!!
「え、綺麗になってる!!」
驚いて、そう言うものの・・キラさんの側へは、ちょっと怖くて近寄れない・・。キラさんは、置いてあった場所へドレスを置くと、私の側まで歩いてくるので、思わず緊張して体が固まる。
キラさんは、私を無言でぎゅっと抱きしめると、
「・・・・・・・・夜は、片時も離れない」
地を這うような低い声でそう、宣言したけれど・・。
キラさん、貴方・・いつも片時も離れてませんよ?私は、窓の外を遠く・・・遠く見つめた・・・。