黙して語らない騎士、王都へ行く。14
控え室でキラさんからひとしきり抱きしめられ・・、赤い顔で庭園へ一緒に向かった。
キラさんは、すっかりご機嫌になったのか、嬉しそうに私を見つめてきますけど、キラさん周りの視線があるので自重して欲しい・・。ご令嬢の視線は常に集まるな〜。
ただ、私が隊服を着ているからか、モーゼの波割りなの?!とばかりに、人が波のように私達を避けていく・・。え?そんな危険物みたいな感じなのだろうか・・。
ま、普通パートナーがいればドレスを着る世界では、私は異色な存在なんだろうな。異世界人なんで、そこんとこ拘らないんですよ。キラさんが穏やかでいれば、私はとりあえず構わない。
おめでたい席を血に染めるのだけは防がなければならない・・。偉いな私・・そんな風に思っていると、ニルギさんが手を振ってこちらへ手招きしていたので、キラさんと一緒に行くと、オルク団長さんがギョッとした顔で私を見る。
そんなに変かなぁ・・。
キラさんを見上げると、ニコッと笑う。大丈夫らしい・・。
気を取り直して、ニルギさんとオルク団長さんのテーブルへ行くと、ニヤニヤとニルギさんは笑っている。
「・・・見習い騎士も、なかなかいいな。子供の騎士が精一杯ウルキラのお世話をしているみたいだ」
「失礼ですねー!先導してるんですよ、設定では!!ね、キラさん?」
キラさんは、静かに首を横に振る。
「・・・もしかして、キラさんはエスコートしている気だった?」
「隊服でも、ナルはナルだ」
「そ、そうですか・・」
私達の会話にオルク団長さんが吹き出す。
あ、とうとう笑われてしまった・・。オルク団長さんは、一生懸命笑いを堪えているけれど、大丈夫ですよ。シーヤ騎士団では、割と日常茶飯事です。
「ご婦人というものは、ドレスを着るものだと思っていましたが・・、いや、なかなか気持ちの良い奥様ですね」
「素敵に表現して下さって、ありがとうございます。うちの騎士団も、もう少し・・そういう表現をしてくれると良いんですけどね・・・」
ちらっとニルギさんを見ると、ニンマリ猫のように笑う。
主にニルギさんと、団長さんですけどね。
「オルク団長さん、試合・・お疲れ様でした。打ち合い・・凄かったです!!剣の事は、さっぱりなんですけど、キラさんとの試合は迫力もあって、あ、剣の流れが綺麗でした!」
オルク団長さんを見て笑うと、少し照れたように笑った。
「負けてはしまいましたが、そう言って頂けると嬉しいです。これは、ますます励まないとですね・・」
ニルギさんが、オルク団長さんを見てにっこり笑う。
「今回は、ナルがいたからウルキラは特別張り切ってただけだ。普段なら分からんよ」
「ははっ、なるほど」
二人の会話に、ちょっと照れくさくなってキラさんを見ると、静かに頷いている・・それは何の同意でしょう?張り切ってた・・とか、かな?
なんにせよ私の隊服姿を見ても、驚いたけど引くわけでもなく、面白がってくれるので有難い。
と、少し離れたテーブルの方から、騎士さん達を引き連れたルーンさんがやってきて、周囲の人がお辞儀をするので、私達もすると近くへやって来た。
顔を上げると、ルーンさんが面白そうに私を見てる。
「・・・随分と面白い格好になってるな」
「申し訳ありません・・、ちょっとしたアクシデントがございまして・・」
金髪のお姉さんに、真っ赤なジュースかけられたとは言えない。キラさんが怖いから。ルーンさんは、何となく事情を察してそれ以上は言わなかった。ありがとう・・。
キラさんとオルク団長さんを見て、
「此度の親善試合、とても素晴らしかった。これからもティルの為に鍛錬を積み、協力し合っていって欲しい」
「ありがたきお言葉・・。承知致しました」
オルク団長さんが、頭を下げるとキラさんもそれに続く。
・・つまり、これからは仲良くやってねって事か。
それは大変素晴らしい・・。仲が悪くて、団長さんは苦労してたもんね・・。ちらっとルーンさんを見ると、
「隊服も似合ってるぞ」
と、ルーンさんがいうので、隣に立つキラさんから圧!!圧が!!
まだ警戒してたのね!!王族だから!!落ち着いて!!
わざわざ煽るでない!と、ばかりにジトっと見るとルーンさんはイタズラが成功したみたいな顔をして、他のテーブルへ行った。と、思った瞬間にキラさんが手を繋いできた。よしよし、落ち着いてくれ・・。