黙して語らない騎士、王都へ行く。12
キラさんの試合がそろそろ始まるはずだ。
ルピスさんと、ニルギさんが戻ってきたのか二人で座っているので、女性騎士さんにお礼を言って、席へ近付いた。
「試合、まだ始まってないですよね?」
「ああ、ナル・・・?!」
ニルギさんが言いかけて驚いた顔をしている。ルピスさんも目を丸くしてる。私はニンマリ笑って、ちょっと裾を摘んでみる。
「・・・隊服、似合うでしょう?」
「・・どうしてそうなった・・」
「なんか知らないお姉様がちょっと・・。ドレス汚れちゃったし、せっかくなんで隊服に着替えてみました!お二人を護衛する・・という設定でどうですかね?」
ニルギさんは、何かを察したらしい。
ええ、まぁ、多分その通りでーす。無言で二人で見つめ合ってしまった。隣にいたルピスさんも小さくため息をついた。
「・・やはり一緒について行くべきだった・・」
「いやいや、ルピスさん・・それは流石に」
ニルギさんは、私の言葉に頷きつつ、
「そうだぞ、ナルはある意味誰よりも強いからな」
「・・まぁ、守護魔法を見ると、誰よりも強いだろうが・・」
「ええ、ルピスさんから見てもそうなんですか?!」
キラさん、一体どれだけ魔法かけてるんですか・・。ジュースをかけたお姉さん無事だといいな・・。ニルギさんは、私の隊服姿を見て、
「・・・見習い騎士みたいで、面白いかもな」
「えー、格好いくないですか?」
そう思ったから着てきたのにー。ルピスさんは、ゆっくり私を見つめて、
「・・・可愛らしいかな?」
ルピスさん・・、それはちょっと照れます・・。小さい声でお礼を言うと、席に座るように促してくれたので、またも二人に挟まれて座った・・。
わっと歓声が上がったので、ドキッとするとキラさんが演習場の真ん中へ歩いていく。オルク団長も出てきた!あ、二人で試合するんだ・・!思わず、身を乗り出してキラさんを見つめる。
シン・・と静まり返った演習場、
「始め!!」
と、言う声と共に、激しい打ち合いが始まった。すごい!!オルク団長さんの動きも、キラさんと引けをとらない!!流石、昇進しただけあって、実力がある・・。ニルギさんが面白そうに二人を見る。
「・・・次の遠征、楽しみだな」
「ニルギ殿も、出席なさるんですか?」
ルピスさんが、キラさんの試合を見ながら聞くと、
「・・ああ。新しい団長の顔を見ておきたくて、今回は来たが・・なかなかいい人材を起用したじゃないか?」
「オルク団長は、実力があったのですが・・、第一王子が前団長を気に入ってましてね・・」
「近衛に行ったと聞いたが?」
「・・・泳がせています・・」
なんか二人の会話が、またもきな臭いぞ・・。
また何かあるの?それは嫌だな・・そう思っていると、ニルギさんがちらっと私を見た。
「・・・今回は未然に防ぐさ。孫も見たいし」
「・・・ニルギさん、キラさんみたく何かの基準を私にしないでください・・」
思わず顔が赤くなるではないか・・。
そう思って、また試合の会場を見る。オルク団長さんが、キラさんへ駆け寄って剣を振ろうとした瞬間、キラさんが下からオルク団長さんの剣を思い切り弾いた。
あっ、と思った途端に、オルク団長さんの首元に剣が寸出で止められる。
「勝負あり!!」
大きな声で勝敗が知らされると、演習場は歓声に包まれ、キラさんとオルク団長さんは握手する。オルク団長さんは負けたけど、王都の騎士団の人達はオルク団長さんを笑顔で出迎えていて・・なんだか温かい感じだった。
私が、キラさんに思いっきり手を振ってみると、ちょっと小さいキラさんが一瞬動きを止めてから手を振ってくれた!
横でニルギさんが、ニヤニヤしながら・・
「・・・後でナル、ドレスの理由聞かれるぞ〜?」
「シラを切ります・・」
そう言うと、ニルギさんとルピスさんが、小さく笑った。
・・・結構、似合ってると思うし・・。ダメかな??
やっとナルに隊服、着せられた・・。