黙して語らない騎士、王都へ行く。11
王様の挨拶が終わると、試合が始まる。
トーナメント形式らしいけれど、私にはさっぱりである。とりあえず勝てばいいんだよね?
本物の剣を使ってはしないそうなので、それを聞いてホッとする・・。
流石に流血の事態は起こされたら、嫌だ。
キラさんは、順調に勝ち進んでいくけど・・いや、つっよいな?
素人ですけど、動きが全然違う・・。こんなに違うものなの?いや、あのでっかい大蜘蛛と戦ってる時も動きが一人、異次元だったけど・・。人間相手だとこんなにもハッキリするんだなぁ・・と思ってしまう。
ニルギさんは「張り切ってるな〜」なんて言うけど、張り切ってるとあんなにすごいの?普段は一体、どんな感じなんだろ。ニルギさんは、キラさんの試合が一旦終わると・・
「ルピス殿、ちょっと姫のお守り・・お願いできるか?」
「・・・・お守りって・・・言い方・・」
クスクスとルピスさんが小さく笑って頷くと、ニルギさんはお茶菓子を食べに行ったのだろう・・、さっさと行ってしまった。
「・・・なんだかすみません・・ご迷惑掛けてしまって」
「いいや、ようやくニルギ殿にもお礼が言えたし・・、よかった」
「・・・ルピスさん、お兄ちゃんですね・・」
そういうと、ルピスさんはちょっと目を丸くして私を見る。
「・・・お兄ちゃん・・」
「あ、すみません、馴れ馴れしかったですね」
「・・いや、構わない。ナルさんは、兄弟は?」
「私、一人っ子で・・、だからルピスさんみたいな兄弟、ちょっと羨ましいです!」
こんな格好いいお兄さんと弟でしょ?
反則じゃない?イケメン兄弟とか・・。あ、後でニルギさんかキラさんに写真撮ってもらおう。ニコニコ笑ってルピスさんに笑いかけると、ルピスさんも小さく笑う。
他の人の試合中、周囲を見ると当然のようにご令嬢の方々は、ルピスさんをチラチラ見ている。そーだよね・・、キラさんにも似てるし、王都一の魔術師だし。
キラさんも休んでいるにも関わらず、ちょっと歩けば皆、そっちを見てるし・・。
王都の騎士団の嫌がらせって、こういう所からきてるのか??団長さんも顔はいいしなぁ〜・・顔は。
キラさんの試合まで、まだ時間があるのでトイレ・・いっておきたい・・。ルピスさんにちょっとお花を摘みに〜と話すと場所を教えてくれて、女性騎士さんが来てくれた。すっごい!!なんかもう・・すっごい!!
無事にトイレを済ませたけど・・、トイレってこんな広い必要あんの?
トイレから出て、ルピスさんの元へ戻ろうとすると、貴族のご令嬢から声を掛けられる。
赤いドレスがすごく似合う、金色の髪をした綺麗な女性に突然睨まれる。
「・・・貴方、どちらの出身なんですの?」
「へ・・・?」
いきなりですね。
異世界ですとは言えないしなぁ〜・・。ちょっと返事に詰まると、
「どこの貴族出身とは言えない身分で、ルピス様やニルギ様のお側にいるのは、既婚者としてどうかと思いますわ」
「あ、ああ〜・・なるほど、そういう」
えーと、キラさんの親と兄なんですよね・・とも言えないし、どうしたものかと女性騎士さんを見ると困った顔をしている。ですよねー・・、身分制度ありそうだし、騎士さんじゃあ止められなさそうだ。
「・・ご忠告ありがとうございます。今後は気を付けます」
ペコっと会釈して通り過ぎようとすると、バシャっと何かを掛けられた。ん?なにこれ??女性はギロっと睨んで立ち去っていった・・。
すっごい・・さすが王都!!愛憎渦巻く場所っぽい〜と思ったら、ドレスにジュースかな?ご丁寧に真っ赤だ・・。どこに隠し持ってたんだろ?しかし、なんつーえぐいことをしてくるのだ・・女性騎士さんは真っ青になってるじゃないか。
私は、ちょっと思いついて女性騎士さんにお願いを一つした。
・・言っとくけど、私は負けず嫌いなのだ。