黙して語らない騎士、王都へ行く。9
昨晩は、大変だった・・。
ダンスを踊ったキラさんが、その後貴族のご令嬢に誘って欲しいなぁーーという眼差しを一身に受けていた・・。すみません、この人、全然気付いていません・・・。オルク団長さんが、「これが噂の・・」って呟いてたけど、何か噂があったのだろうか?
ちなみに私も誘われたけど、キラさんが速攻で阻止した。
そこは想定内ですけども、知らない方は驚いてました・・。キラさんの私への愛は、ちょっとすごいんですよ・・。
ニルギさんを見ると、甘いケーキをしこたま食べていた・・。遠征がキラさんと面倒っていうのはわかるけど、純粋にお菓子食べたかっただけでは?
翌日の試合もあるので、ほどほどの所でオルク団長さんと一緒に引き上げると、
「今日は一緒で、本当に助かりました。明日の試合もよろしくお願いします」
と、キラさんと握手して去っていった・・・。
え、まじで格好いいな!!団長さんにめっちゃいい人でしたって伝えておこう。
キラさんに「いい人で良かったね〜」と言うと、静かに頷いていたから、キラさんもそう認識したようだ。覚えてね・・。
部屋へ戻ると、イヤリングを外して小箱にすぐしまう。失くしたら嫌だし・・。と、それをキラさんがじっと見ている。
「・・・・?なんですか?」
「いや、綺麗だな・・と思って」
き、キラさんが、キラさんが!!!甘い!!甘いぞ!?
びっくりしつつ、顔が赤くなっていく私に優しく笑って頬を撫でる。う、うああああ、照れるぞこれ。
「・・明日も楽しみにしてる」
「・・・・・は、はい・・・」
目が白黒しつつ、慌てて着替えに行った。お風呂に入って布団に入った私は爆睡した。キラさん曰く、ベッドに入ったな・・と思ったら寝ていたらしい・・だって、庶民だし!!ダンスとか・・!!もう恥ずかしすぎて死にそうだったんだもん!!
・・・で、今日である。
豪華な寝室で目を覚ますと、どこだっけ??って、一瞬分からなかったけど、隣のキラさんを見て思い出した・・。
キラさんも珍しく寝ている・・。
昨日は、女性達がキラさんをずっと見ていた。
横に奥さんいるんだけどなー・・、あれかな?モブみたいな感じだった?
綺麗な寝顔を見ると、気持ちはわかるけど・・。
今日の親善試合に出たら、キラさんはもっと人気になっちゃって・・、夜の祝賀会とかではどうなっちゃうんだろう・・と、ちょっとモヤモヤする。
・・・ニルギさんに誘われてお城へ、興味本位で来たら・・こんなにヤキモキするとは・・。ちょっと悔しくて、キラさんの綺麗な鼻をつまんでみる。と、少し目を瞑ってから、キラさんの目が開く。
「・・・ナル」
うう・・・、そっと鼻から指を離すと、キラさんが面白そうに笑って私を見る。
本当に表情が出てきたな・・、オルク団長さんが言うくらいだもん・・、ハタから見ても分かるんだな・・。
キラさんは、うーん・・と考え込んでいる私をぎゅっと抱きしめる。
「き、キラさん・・、も、もう起きよう?」
「試合・・」
「ん?親善試合?何かあるの?」
「・・・見てて欲しい」
私の首元にキラさんが、話しかけるので大変くすぐったい・・。
「もちろん見ますよ?」
キラさんをちょっと見下ろす感じで話すと、キラさんの水色の瞳が、朝日と混じり合って綺麗に光る。あ、綺麗だな・・。この瞳、本当に好きだな。
「・・・・女性に声かけられると思うけど、私も見て下さいね」
思わず本音がぼろっと出てしまった・・。
キラさんは、ちょっと驚いた顔をして・・、それから嬉しそうに笑ってキスしてきた・・。
「ナルしか見てない」
「は、はい・・」
キラさんは、ぎゅっと更に私を抱きしめるんだけど、力が強い!!
内臓が出そうになったので、肩をバンバン叩くと、残念そうに腕を緩める。・・・・キラさん、力の加減を覚えて欲しいです・・。