黙して語らない騎士、王都へ行く。8
ニルギさんやキラさんを見ながらマナーを守りつつ食べて、事なきを得た私を褒めて・・。もう部屋帰りたい。
食事が終わると、部屋を移動してダンス・・らしい。
王都の団長のオルクさんは、ダンスは苦手なので・・と、苦笑いして教えてくれた。奇遇ですね、私もです。
「・・・ダンスとか、食事とか・・、何というか形式張ってないで、楽しく飲んだり食べたら気楽なんですけどね」
ぼろっとオルクさんに本音が出てしまった・・。と、意外そうな顔をする。
そして、静かに頷いてくれた。
「・・こちらに来て日が浅いのに、こういった式は確かに緊張しますね。私も、今までは副団長だったので、時々逃げてましたがこれからは、必ず出席しなければいけないので・・今から気が重いです」
遠い目をするオルクさん、不憫だ。オルクさんの隣にいるニルギさんは笑ってるし、キラさんも静かに頷いている。皆、概ね面倒臭いらしい。でも、こういう人なら、これからシーヤ騎士団とも上手くやっていけそうだな。
「・・私もこういう話ができるオルク団長さんと今日ご一緒できて良かったです・・。形式通りにしっかり!とか言われちゃったら、ちょっと大変でした。」
「それは良かったです。今後も協力し合う騎士団ですから、仲良くできたら有難いです」
柔らかく笑ったオルクさんに、私も笑い返す。
うん、この人なら団長さんも仕事しやすそうだ。
キラさんを見ると、じっと私を見ていた。
「キラさん、どうかしました?」
「・・今度、合同で遠征をする」
「え?そうなんですか??っていうか何で今??」
「思い出した」
思わず、キラさんとオルクさんを交互に見てしまった。オルクさんは、可笑しそうに笑ってキラさんを見ると、
「戦場では寡黙に戦うのに奥方といると表情は違うし、随分と話されるんですね」
「え?寡黙?あ、寡黙ではあるか・・」
「ナルとは話す」
「いや、無言もまだ多い気もするけど・・」
甘い言葉は、結構出てくるかも・・、はたっと気付いて少し顔が赤くなった。ちょっと咳払いしてから、遠征の話をキラさんに改めて聞いてみた。
「・・オルク団長に変わったので、騎士団の動きや働きを今度もう一度話し合う事になった。団長は、それもあって新人騎士の試験を早めた」
「ええ〜、キラさん・・それ私、聞いてない・・」
遠征の話をしてたかもだけど、忙しすぎたからな・・。
ニルギさんがニヤニヤしながら私を見る。
「ウルキラか、ラトルのどちらかが参加になったんだが、ウルキラがこちらへ参加すれば、ラトルが遠征行きだ。だからあえてナルをこちらに誘ったんだ。感謝しろよ」
「え?まさかの私を餌にしたんですか?キラさんを釣るために?」
ニルギさんは、クスクス笑ってキラさんを見る。
「ナルがいない時の、遠征中のウルキラは面倒臭いからな。一緒に遠征に行くなら楽なラトルがいい」
「・・・・ニルギ」
キラさんが、じとっとニルギさんを見ると、オルク団長さんも小さく笑う。ううう、恥ずかしい・・。どんだけ一緒にいたがるんですか、キラさん。
と、ダンスが始まったのだろう。
音楽が鳴ると、キラさんが手を差し出す。水色の瞳はキラキラして、私を見つめていて「嫌だ」なんて言葉がどこかへ行ってしまう・・。
ちょっと顔が赤いけど、そっと手を重ねるとキラさんは嬉しそうにホールの方へ歩いていく。お、踊れませんよ?本当に付け焼き刃のダンスですからね?!
赤い顔をしつつ、キラさんにいつもより密着してますますドキドキしてしまう。
「・・下手くそですからね、手加減して下さいよ」
「ああ」
見上げたキラさんは、多分誰よりも格好いいと思う。
だって周りの綺麗なお姉さん達は、キラさんに魅入っている。わかるよ、わかる・・。一番そばにいる私がそう思う。
音楽が始まって、ヘロヘロなステップを踏んでもキラさんは上手にリードしてくれて、嬉しそうに笑うキラさんを見れた私は、それだけで十分楽しかった。ものすごく照れ臭かったけど!