黙して語らない騎士、王都へ行く。7
キラさんとニルギさんと一緒に、夕食会の広間へ通されると・・、体育館くらいある?っていう、天井が高い赤い絨毯の敷かれた部屋に、それぞれテーブルが用意されている。
つまり、グループごとに座れとか・・?
上座に長いテーブルがあったから、そこがルーンさんや王様が座る席かな。
「回れ右して帰りたい・・・」
私がボソッと遠い目で言うと、ニルギさんは飄々とした様子で、私を見る。
「まぁ、ナル・・これは慣れだ、慣れ」
「そんな簡単な話じゃないと思います・・・」
広間にいた侍女さんが、私達の座るテーブルに案内してくれると、すでに人が座っていた。ニルギさんが手を上げると、座っていた人も小さく手をあげた。
赤茶の髪で、がっしりした体で目元に傷があって、キリッとした目つきの人だ・・。おお、でも格好いいなあ。その人は、椅子からゆっくり立ち上がると、私とキラさんを見て、
「王都騎士団、団長のオルク・ベルガンドだ・・。先日は、魔物討伐助かった」
小さくお辞儀するので、私たちも小さくお辞儀した。
キラさんは、オルクさんを見て、
「こちらこそ、魔物討伐ではお世話になりました。妻のナルです・・」
おお、妻って・・・、慌ててお辞儀したよ。
あとキラさんが普通に話してる・・!!ちょっとそっちに驚いた!
ちらっとニルギさんを見ると、面白そうにニヤニヤ笑っていた。・・・はいはい、驚きました・・。期待通りでしょ?
挨拶を終えると、私達と一緒に座り・・他の人達も座りだしていた。
「・・すぐに始まるわけじゃないんですね・・」
「奥様は、こういった式への参加は初めてですか?」
お、奥様!!そんな風に呼ばれるのも初めてですね〜!とは言えない雰囲気だ・・。ニルギさん、こっち見て笑わないの!
「はい・・、普段は、お、夫と同じ職場で働いているので・・、こういった場所はちょっと苦手・・でして参加は初めてです」
「そうでしたか、確かに私も堅苦しいのは苦手でして・・、副団長がまんまと逃げたので、今回は出席していますが、やはり慣れないですね・・」
へ〜・・、王都の騎士団は、副団長さんがそんな感じなんだ。思わず団長さんを思い浮かべて笑ってしまった。
それよりもいつも文句を言ってくる・・・と団長さんが溢す騎士団の人とイメージ合わないなぁと思っていたら、先日の戦いで、武勲を立てたので団長さんに昇進したらしい。なるほど納得!!
前団長さんは、今は近衛騎士の方へ昇進とか・・へ〜、よく分からない!
と、王様が来たのか、さっと皆が頭を低くするので、真似して下げる。
座ったのか、挨拶が始まると頭をあげる・・。
つ、疲れるーー・・・。
げそっとした顔でキラさんを見ると、ピンと背筋が伸びていて綺麗な顔が照明に照らされて、キラキラが倍増して見える。自分もちょっと姿勢を思わず直して前を見る。沢山の人が、王様の話を聞いていて、その横でルーンさんも真面目な顔して座ってる。
大変だなー・・王様って。
私だったら、早くご飯食べたいって思っちゃうなぁ・・そう思ってルーンさんを見てると、ふと目が合った?ちょっと首をかしげると、小さく笑った気がする。なんか面白いものあったのかな?
キラさんを見ると、小さく微笑みつつ私を見ている。
・・・これかな?笑ったの???どこへ行ってもキラさんはマイペースだな。・・まぁ、そのおかげで安心するけど。
乾杯の挨拶が終わって、いよいよ食事だ。
ここまで、長くない・・?
キラさんが、食事を取っている姿も様になるなぁなんて思いつつ、オルクさんとも色々話す。
「奥様は、明日の晩餐会も出席なさるんですか?」
「あ、はい」
「では、その前に騎士団の親善試合にも出席されるんですか?」
「・・・・・はい?」
親善試合?お茶会とかしか聞いてないぞ・・?
キラさんを見ると、ああ・・と、思い出したかのように私をみる。
「明日、午前中試合をする」
「な・・!」
早く言ってください!!
と、大声で言いそうになったのを咄嗟に防いだ私、えらくない?
ニルギさんが、笑いを噛み殺しながら私を見ている・・・。知ってたな〜〜!!全くこの親子は!!