黙して語らない騎士は心配性。
団長のラトルさんの計らい(?)で、結婚問題は一時停止となったが、就職先は決定した。
キラさんの勤めている騎士団の宿舎のお掃除係だ。
寮完備、福利厚生、バッチリ!ありがたい!!ハラショー!!
早速団長さんは寮長さんに取り次いでくれて、説明を聞きに行く。キラさんが、じっと見ていたが休んで頂いた。
寮長さんはフランさんと言って、30代くらいの茶色のくせっ毛な髪に、茶色のタレ目‥という可愛らしい感じの男性だった。
フランさんは、私が異界人だと団長さんに聞くと、外へは絶対に行かないよう・・、必要な物があれば買ってくるので、何かあれば団長さんか、キラさん、それか自分に声をかけるようにと話してくれた。
お掃除係の制服と、普段着で着られそうな服を、倉庫からたくさん持ってきてくれて、早速着替えるように・・と、言われたので、別室で着替える。
膝下まである紺色のワンピースに、白いエプロンという、メイドさんルック。
20歳を過ぎて着るなんて思わなかったわ〜〜・・・。
「フランさん、着替えてきました」
「ああ、似合いますね〜。洗濯場に持っていけば、毎日洗ってもらえますからね〜、場所を教えましょう」
「はい」
なんだかのんびりと話すので、自然とほのぼのする・・。
「その制服は少し魔力を入れ込んであるので、ぱっと見は異界人だとは分かりにくいんです〜。ただ、力がある人だとすぐわかってしまうので、こちらも配慮しますが、人前にはできる限り出ないようにして下さい。」
「はい」
人権保障を声だかに要求したい・・。
寮の中を案内してもらい、建物の位置を覚えていく。
騎士団の詰所の隣には馬房や、馬車を止める場所があり、その奥にキラさん達の宿舎があった。すぐ隣に、これから住む寮があったので安心した・・。何かあったら、声かけに行こう。
そう思ったのに、寮でなく宿舎に通される。
あれ?なんで??
茶色のレンガでできた大きな宿舎は、内装は白いペンキが塗られた壁で、所々に花が飾られていた。木の床板がツヤツヤと光っていて、たくさんある窓から光が差し込んでいて、落ち着いた雰囲気だった。
「ナルさんの部屋は、2階の一番右端です」
「ここは、他にも誰か住んでいるんですか?」
ドアがいくつかあったので聞いてみる。
「ここは、2階全部がウルキラさんの部屋でして、あと書庫と客間とリネン室、風呂、トイレがありますね〜」
「・・・え???」
「上の階は団長さんがいるので、安心ですよ〜」
「・・・・ええ???」
私は宿舎をざっと見たけど・・、ここ、相当広いよね???
2階、丸ごと自分のスペース???
「ひ、広いですね・・・・」
「これでも狭い方なんですが、お二人共忙しくて帰ってこられないし、別にいい・・って言うんですよね〜。あんなに武勲を立ててるのに・・欲がないんですよ。その内、宿舎も建て替えはする予定です〜」
「はぁああ・・・・」
スケールでっか!!
私は驚きつつ、フランさんに部屋の前まで案内してもらう。
服を抱えていたので、ドアを開けてもらい、中へ入ると、薄い淡いグリーンの壁紙に、木が組み込んである床。棚、ベッド、テーブルと椅子が置いてあった。
「わあ・・・可愛い」
「この部屋だけ、ちょっと可愛らしいんですけど、ちょうど良かったですね〜」
「はい!嬉しいです!」
「服は、そこの棚にしまっておいて下さい。靴もあった方がいいので、あとで持ってきましょう。仕事は明日から教えますから、今日はひとまずゆっくり休んで下さい。食事は後で持って行きますね。では失礼します〜」
「あ、ありがとうございます!」
のんびりした口調だけど、忙しいのだろう・・。説明をするとさっさと行ってしまった・・。
「明日からお仕事かぁ・・」
服を棚にしまって、ベッドに倒れこむと、あっという間に睡魔がやってきて、私はぐっすり眠ってしまった。




