黙して語らない騎士、キャンプ終了。
薄い赤い夕方の空は、宵の明星に変わっていく。
空の移り変わりを見るだけでも、キャンプはなかなかいいものだなって思う。キラさんと、片付けを終えてしばらく椅子に座って空をぼんやり見ていた。
「自然の中で、空を見るだけで楽しいって思えるのは、初めてかもしれません・・・」
「・・そうか」
キラさんが静かに笑って答えてくれた。
「・・馬にも乗りたいし、キャンプも魔物退治がなければ、また行きたいです」
キラさんは、クスクスと面白そうに笑う。・・・ほんと、表情出てきたな〜・・・。そんな風に笑った顔してるのキラさんは気付いてるのかな。
「ナルといると、どこでも楽しそうだ」
「そうですか?私、何かいつもやらかしちゃうから・・」
「・・・そうか」
静かに笑うキラさんは、大人だな・・。
明日でキャンプは終わって、いつも通りの日々に戻るけど・・、やりたい事が増えた。それって、ちょっと前では考えられなかった。戦争になりかけたし、魔物の討伐もあった。それ以前は、私が狙われる事態もあった・・。
「・・平和っていいですねぇ」
しみじみというとキラさんも頷いた。
「・・ずっと、このままだといいな」
「そうですよね・・」
ぼんやりと空を見ていると、月が出てきて・・、淡い光を放つ。
キラさんがそっと手を繋いできて、ちょっと照れるけど・・手を握り返すと、キラさんが私をゆっくり見る。
「・・ナルがいたから楽しかった・・」
「・・・それは良かったです・・」
嬉しそうに笑うキラさんを見ると、ちょっと・・いや、かなり大変だったけど、良かったなと思う。二人で見る月は、なかなかロマンチックでした。はい。
そうして、あっという間に翌日!
キラさんの晴れ男っぷりは、今日も健在である。
朝食をとると、それぞれ帰り支度をして、団長さんの号令で馬に乗る。私?もちろんキラさんの馬に乗ってます。
「・・・いいのかな・・公私混同ではないのかなぁ・・」
若干、不安なんですけど・・、団長さんをちらっと見るとニコニコしてこちらを見るので、もう諦めた・・・。綺麗に光る水面を見て、また近く来て今度こそ水遊びしようと思った・・。キラさんだけならいいだろうし。
森から、林へ・・、そうして街へと戻っていく。
シーヤの街を見ると、ああ、帰って来た・・と自分の場所はここなんだなって感じる。すっかり馴染んでいる自分が怖い・・・。キラさんを見上げて、
「・・・家に帰って来た気分です」
そう言ったら、笑って「おかえり」と言ってくれた。
騎士団に戻ってくると、馬から下ろしてもらって馬車の荷物の確認のためにキラさんと別れる。キラさんの方も、午後は訓練の仕事だ・・、仕事の鬼だな・・。
フランさんと、ライ君と、手伝いに来てくれた事務員さんと荷物の確認やチェック、返却を手分けしてやる。騎士さん達も片付けを済ませて訓練へ行った・・・。すごい、体力すごい。
私とフランさんとライ君は、今回は早めに上がらせてもらった・・、無理、もう動けない。家に帰って、久々のお風呂を堪能するとベッドに倒れこむように眠ってしまった。
目がふと開くと、キラさんがこちらを見ている。
あれ??キラさん・・?
ふわふわした頭で、キラさんを見て、窓の外を見ると薄暗い・・・薄暗い??!
「あれ?キラさん、今、もしかして・・夜??」
「ああ、よく寝ていた」
「す、すみません・・・夕飯・・!!」
「買ってきた。食べるか?」
・・うちの旦那さん、最高だな・・・。
食べる〜と言うと、キラさんが手を貸して起こしてくれた。
ちょっとまだぼんやりした頭で夕食を食べて、後片付けを終えるとまたベッドに倒れこむ。いや、本当に疲れた・・。
キラさんは、余裕な顔でベッドへ来ると私の頭を撫でる。
「キラさんの体力と、仕事量・・本当にすごいです・・尊敬します・・」
「そうか」
「あと、格好いいなって思いました」
ウトウトしながら、そう呟くとキラさんは小さく笑ってキスすると、布団をかけて一緒に眠る。・・ああ、そういえば、キラさんと一緒に寝るのも4日ぶりだ。そう思うと、寂しかったかも?
・・そんな風に思っちゃう私・・、大分、キラさんに似てきた?!って、ちょっと思いつつ瞼を閉じて・・キラさんに寄り添うと一緒に眠ったのだった。