黙して語らない騎士、キャンプで食べる。
夕飯は、自炊するらしい。
騎士さん達は、手慣れたもので、サクサクと切っては焚き火でお肉を焼いたりしている。
「・・・そっか、こっちはバーベキューとかいう概念ないんだ・・」
ぽつっと溢すと、団長さんが目ざとく聞きつける。
「何?バーベキューって?ナルさんの世界の話?」
「あ、はい・・こう鉄で出来た四角い箱に炭を入れて、その上に鉄板や網を広げてお肉とか、野菜を焼くんですよ」
「あ〜、こっちにもあるけど、サイズ小さいかも」
「そうなんですか〜、トウモロコシにバターと醤油を塗って食べると、お酒に合うんですよね。飲んだ事ないけど、飲める人はそう言ってました」
団長さん・・・、ヨダレ出てます。ヨダレ・・。
「ええ〜〜、何それ!!すっごく美味しそう!!」
「トウモロコシ・・、今回持ってきてますし、作りましょうか?」
「作って、作って〜〜!!!」
「はいはい」
ルーナさんと新婚なのに、訓練で離れてきている団長さんにせめて優しくしてあげよう・・。そう思って、トウモロコシの皮をぺりぺりと剥がしていると、キラさんがこちらを見ている。
「・・・俺も」
「はい、キラさんのも作りますよ。お醤油ないから・・、塩だけど、いいですかね?」
静かに頷くキラさん。
よしよし、ついでにフランさんとライ君の分も作ってあげよう。
キラさんも焚き火を作ってくれたので、バターと塩を用意して焼き始めると、他の騎士さん達も作りたがったので、作り方を教えてトウモロコシを渡しておいた。
辺り一面いい匂いがしてきた頃に、団長さんから
「出来上がったら、食えよ〜!火の始末はちゃんとするように!」
そう言うやいなや、皆すごい勢いで食べ始めた・・。
騎士さん達の食欲、すごい・・。
隣でキラさんも、ものすごく食べてるし・・。そうだった、騎士さんの食欲はすごかったっけ・・。
フランさんとライ君と、それをポカーンと見つつ、
「あれだけ食べるから、あんなに動けるんですね〜」
「うちの兄だから、あんなに食べると思ってました・・」
「あ、分かる!私も最初キラさんの食べる量にびっくりしたもん!」
トウモロコシを焼きつつ、勢いよく食べる騎士さん達をみる。団長さんも綺麗な仕草で、どんどん食べるので・・やっぱり団長さんはダテじゃないんだなぁ・・。
焼けたトウモロコシは、最高に美味しかったらしい。
団長さんは、トウモロコシを食べるたびに、
「エール飲みたい〜〜」
と、嘆いていた。訓練ですからねぇ・・。
フランさんはニコニコしながらトウモロコシを食べて、団長さんを見る。
「今回は訓練ですからね〜。あ、でも今回、魔物討伐とガダ侵攻で成功したって事で、今度大々的に王都でお祝いするそうですから、団長さんとウルキラさんはそちらで飲んで下さいね!」
「え??!お祝い??」
私はびっくりして、フランさんを見た。
「今回は、シーヤ騎士団が大活躍しましたし、勲章を授けるそうですね〜。団長さん、将軍になっちゃうんじゃないですか〜?」
「嫌だ〜〜〜!!俺は、これ以上いらない!!王都なんて面倒臭いしがらみばっかだし・・」
団長さん、心の中ダダ漏れですよ・・。
キラさんを見ると、静かに頷いている。
「偉くなれば、時間がなくなる」
「あ、そうなんですか?」
「ナルに会えなくなる」
「・・・予想通りの回答だったーー!!!」
なんというか、どこまでも変わらないキラさんに安心はするけど、団長さんもその辺りは同意らしい。新婚だしね・・、これ以上忙しくなったら、ますます会えなくなっちゃうしね・・。
団長さんは、バターのついた指をぺろっと舐めつつ、
「まあ、恩を売っておくさ。こっちに騎士の養成学校を作って欲しいとも言われてるし・・」
「・・それは、また大変そうですね・・」
「うん、だからウルキラの方は任せた!!!」
いい笑顔で、上司が部下の世話を奥さんに丸投げしてまーす!ルーンさんに手紙でも書いておこうかなって思った。