黙して語らない騎士の口を動かすお仕事です12
騎士団の詰所の中は、絨毯が敷いてあり、壁紙はシックなブラウン・・と、いった落ち着いた雰囲気の内装だった。
なんかこう・・もっと戦う人が多いから、殺伐とした雰囲気かな・・って思ってたんで、ちょっと安心した。もちろん室内を歩く人は、ムキムキした感じの人は多かったけど・・。
キラさんに連れられ、階段で登っていく。
・・・あ、ちょっと待って・・ちょっと慣れない乗馬で、体が辛くてですね・・。ヨロヨロと登る様子を見て、キラさんが手を差し伸べてくれた。
「す、すみません・・・」
「ああ」
登りきれるかわからなかったので、遠慮なく手を引かれて、階段を登る。途中、階段を降りてくる人に、ギョッとした目で見られたけど・・、あれか?異界人・・珍しいのか?
3階まで登りきると、少し奥まった扉の前に着く。
ここが騎士団長のお部屋・・かな?
だけど、キラさんは扉の前で立っているままだ。
「・・・キラさん?」
キラさんは、無言でドアを見ている。
「・・・・ナル、もし、あの・・」
「はい・・?」
珍しく言い切るだけのキラさんの言葉の歯切れが悪い。やっぱり何かあるのかな・・?どこか不安に思った時、
「おーい、早く入っておいで〜」
と、ドアの向こうから声が聞こえる。
ドキッとして、思わず体がビクッと揺れる。
え、気配でわかるの・・???
「き、キラさん・・・」
私は、ちょっと・・いや、かなり緊張してきた。さっきから手を繋いでいたキラさんの手をぎゅっと握ると、キラさんはハッとして、こちらを見る。
切ない目で見る。
ハッキリわかるくらい、悲しそうな目で見る。
え・・なんで・・・?
今まで無表情だったキラさんなのに・・感情を出している・・。
少しの間キラさんは私を見ると、スッと表情を消して前を向き、ドアを叩く。
「ティルト国、シーヤ第一騎士団副団長、ウルキラ入ります」
静かな声で、挨拶をしてドアを開ける。
私はゴクッと静かに唾を飲み込み、キラさんの後をついて部屋へ入る。
部屋の中は、重厚な家具が置かれた少し薄暗い部屋だった。
その真ん中に大きな机があり、乱雑に書類が積まれている。そんな机に座っている人物に目をやると、
短く切った綺麗な金髪をした、とても綺麗な男の人がこちらを笑いながら見ていた。
「・・異界人の方だね?初めまして、私はラトル・ユリ・ファルトと言います。ここの騎士団の団長です。」
静かに低い声が告げる。
あまりに声も顔もいいから、びっくりした・・。
「あ、な、ナルです。ソネチカ・ナルです」
慌てて、お辞儀をする。
ひゃああ・・これはキラさんと同じくらいの美形だな・・そう思って、顔を上げる。
「ウルキラ・・、異界人の保護、ご苦労。一旦下がって休め」
団長さんが静かに言うと、キラさんは私の手をぎゅっと握る。
え・・?ど、どうした・・・?私は、キラさんの方を見ると、キラさんは押し黙っている。なに?何かあったの?不安になって、ドキドキしてくる。この人、悪い人とか??え、じゃあ置いていかないで欲しいかも・・。
「ウルキラ・・、ナルさんを不安にさせてどうする。手を離してあげろ」
団長さんは、ため息をつきながらこちらへ歩いてくる。
私は怖くなって、キラさんの後ろへ隠れる。
「ナルさん、怖い思いをさせてしまって申し訳ない・・。ウルキラ・・?」
そう言って、私とキラさんの手をそっと離すように触る。
私は、手を離すべきか、握るべきか迷っていると、キラさんがそっと手を離す。き、キラさーーん!!!
「・・・ナル、外で待っている」
キラさんは、私にそう言うと敬礼をして、部屋を出て行く。
一瞬にして、私と美形の団長さんと二人きり・・・。
私はどうしたらいいのか・・と、体が固まってしまう。
すると、ククク・・と笑う声が聞こえて、団長さんを見ると、面白そうに私を見ている。
「ねぇ、君、どうやってあいつを手なづけたの?」
「・・・・・・・・・・はぁああ???」
私は思いっきり怪訝な声で聞いてしまった・・・。