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黙して語らない騎士に花束を。  作者: のん
黙して語らない騎士と異世界人の日常編。
128/566

黙して語らない騎士は戦っている。


物凄い音がして、驚いて窓から外を見る。


真下の玄関がまるで火事があったかのように真っ黒に辺り一面焦げている。ウルクさんと他の騎士さんが誰かを取り押さえているのが見えた。


「え、何が起きたの・・・?」


私が下を呆然と見ていると、ルピスさんがふぅっとため息をついた。


「始まったようですね・・。フランさん、地図はありますか?」

「はい!」


すぐにテーブルの上に地図が置かれ、ルピスさんがその上に手をかざす。と、地図の上に赤い印があっという間に広がる。


「順に爆発するようです。間に合いそうにないのは止めましたが、この印のは騎士達でお願いいたします。解除の仕方は以前話した通りです」


ルピスさんの言葉にギョッとする。

ば、爆発?!!あ、さっきのもそうか・・!


「すぐに渡してきます」


フランさんは、あっという間に下へ行ってしまった・・、大丈夫かな。ルピスさんは、もう一枚地図をテーブルの上に広げてみる。あ、これはもっと広範囲だな?


シーヤと印が付いていて、少し離れた所に王都と書いてある。隣の国も書いてある・・この世界の地図かな・・ルーンさんも近くに寄って地図を見る。


ルピスさんが手をかざすと、シーヤと王都の中間が赤い。


「こちらも始めたようですね」

「ガダの色も混じっているな」


よく見ると、青い色が混じっている。


「ガダって、隣の国ですよね・・ここの海を隔てた所にある国」


ルーンさんが頷いてガダを指さす。


「ガダはずっとうちの国が欲しくて、何度も戦争を仕掛けてきてた。今回は兄が手引きしたんだろう・・そのままでも王位は継げたのに・・」


奥歯を噛み締めて地図を見る。

なるほど・・お兄さんを唆したか、なんか理由があってガダと手を組んだのかな?


「王都の騎士が魔物が出た場所へ向かった所へ、一気にガダは王都を攻める予定でしょうが・・」


ルピスさんは、静かに微笑む。


「そういった事はこちらも掴んでおりますから・・」


細い指が、ガダの首都をつつっとなぞる。


見てみると、赤い無数の丸がガダを取り囲んでいる。

え・・・?これってシーヤ側の色???


顔を上げてルピスさんを見ると、小さく頷く。


「終わりにします」


笑顔なのに、低い静かな声だった・・。


な、なるほどぉ・・・・?

ゾワっとしたけど・・戦況を以前から掴んでいたんだろう・・。


ルーンさんは、静かにソファーに座り直してじっと地図を見る。

赤い丸が無数に動いている。青い丸はさっきまで沢山あったはずなのに、ドンドン減っている・・。ええと、つまりこれは人間・・だよね?


ルーンさんは小さくため息をつく。


「・・・ここに魔術師としていたかったな」

「ルーン」

「ルピス様にそう呼ばれるのも、あと少しです」


そうか・・、勝ったら次の王様になるんだもんね・・。それは確かに気が重い。しかも当初は魔術師になりたかったんだし・・。


「怒らないなら、今まで通り普通に話しますよ?」


私がぼそっと言うと、ルーンさんが私を見る。


「・・魔術師として練習してた事は何も無駄にならないし、ルピスさんと出会えたし、いい事もあったと思うんです。私も結構、面白かったです・・。だから、不敬とかで怒らないんなら、今まで通り話しますし、熱が出たらベッドに倒しますよ」


ニマッっと笑って、ルーンさんを見るとちょっと顔が赤い・・。



「・・ウルキラ・・ずるいよな」

「え?なんでキラさんがずるいんですか?」



ブーブーと文句を言おうとすると、隣のルピスさんが静かに笑っていた。



そうしてしばらく赤い丸が活発に動いている地図を見ていた。

早く・・、少しでも早く終わってみんな無事に帰ってきて欲しい・・、そう強く願いながら。





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