黙して語らない騎士は出かけてます。
それから何日間かは、シーヤ騎士団は緊張した空気だった。
ルーンさんとルピスさんは日中は執務室で過ごして、団長さんの仕事を手伝ってくれた。お、王族だけどいいのかな?まぁ、もういっか・・。
私がお茶を淹れて、一人一人カップを渡すとホッとした空気になる。
・・みんな緊張が解けないよね〜・・。
いや、私も解けないけど・・、そう思うたびキラさんが掛けてくれた手首の魔法が光るんだよね。大丈夫だよって、言うみたいに・・。
ちらっとそれを見たルピスさんが、私を見る。
「・・ナルさん、その手首のウルキラですか?」
「あ、はい・・・、守護魔法と、また何かしてくれたみたいですけど・・」
「そうですね・・、ナルさんに何かあったら、ウルキラが身代わりになる魔法かかってますね」
お茶を飲みながらルピスさんがふんわり笑う。
「・・・・・・え???」
「・・ウルキラは、ナルさんが何より大事なんですね」
「い、いやいやいや、どう考えても分不相応な魔法ですよね?!これ?!むしろ私が身代わりになったほうが、ずっといいのに!!えええ、ルピスさん・・これ、解除とか・・」
ルピスさんは、ちょっと考えつつ、
「無理です、解除できるのはウルキラだけになってますね。ニルギ殿に教えてもらってたとはいえ、なかなか良い術式を組みましたね・・」
「感心するのはそこじゃないと思います〜〜〜!!!」
この兄弟は、本当にズレてるな!!!
そんなところも似てるよ!!!
私ががっくりしていると、ソファーに座っているルーンさんが小さく笑っている。
「・・執着がすごいな」
「・・・・私は真剣に悩んでいるのに・・・」
思わずタメ口で話してしまった。
ルーンさんは気にしないらしい。クックと笑ってる。・・にゃろう。
「それだけ大事にしてるんだから、すぐ帰ってくるだろ」
「・・そうですね、帰ってきます。全部片付けて」
私がそう言い切ると、ルーンさんとルピスさんがちょっと目を丸くする。
後ろでフランさんがクスクス笑ってる・・。
絶対帰ってくる。私に会いたいから。そばに居たいから。
ヘラっと笑って、私は二人を見る。
「・・・・うちの旦那さん、すごいですよ?」
そういうと、ルピスさんは嬉しそうに微笑んで、ルーンさんは、はぁっと大きなため息をつく。フランさんは・・、後ろを振り返ったら面白くて堪らない!といった様子で笑っていた。・・団長さんには言わないでくださいよ?
と、執務室のドアをノックする音が聞こえてドキッとする。
フランさんが返事をすると、ウルクさんが入ってきて・・ちょっとホッとした。ウルクさんは、結婚したばかりだから!と、団長さんがこっちの担当にしたらしい・・。
いちいちイケメンだよね、あの人。
帰ってきたら、絶対盛大に結婚式を祝ってあげよう。
ウルクさんは、挨拶をすると書類をフランさんとルーンさん、ルピスさんに渡して足早に執務室を出ようとして、ふと私を見る。
「ん?どうかした?ウルクさん・・」
「・・・ライ、こっちで仕事・・大丈夫っすか?」
「ばっちりだよ〜、いつも助かってる!今日は、ニキ君の病院に付き添ってるんでしょ?頼りになるね」
ニコニコ笑って話すと、ウルクさんはちょっと照れ臭そうにする。
「急な休み・・増えるかもしれねっすけど、お願いします」
「は〜い」
・・・この兄弟は、なんというか・・可愛いな!
ほっこりしつつ扉を閉める。
窓の外を見ると、今日もいい天気だ。
きっとキラさんは今日も元気だろう・・・。天気で判断しちゃう。
そうして、また仕事をしようとすると・・
外で轟音が聞こえて、私は大きく飛び跳ねた。