黙して語らない騎士心配する・・。
午後の仕事を終えて、一旦家から着替えを持って寮に泊まる用意をする。
「・・・なんか不思議な気分ですね」
カバンに自分の服や、洗面用具を詰めているとしみじみ思って・・、ポツリとこぼすとキラさんは小さく頷く。寮で過ごすって、付き合っていた時みたいだなぁ・・そう思って小さく笑う。
キラさんは、私の側に来て私をじっと見つめる。
「ナル」
「はい?」
「少し・・、長く出かける事になるかもしれない・・」
キラさんから改めて言われて、胸がズキリと痛む・・。
「あ、はい・・。ニルギさんがそう言ってました・・ね・・」
キラさんの瞳が揺れて・・、急に水色の瞳が恋しくなる。
嫌だな・・、やっぱり離れたくないけど・・、言ったら・・辛くなるしな・・。
キラさんが、そっと頬を撫でる。
「ナルといたい・・」
キラさんは、いつも通りだなー・・・。でも、そんなキラさんだから好きなんだけど・・、ちょっと照れくさいから、素直に言えないけど・・。
「早く帰ってきて下さいね」
「約束する」
「はい」
にっこり笑うと、キラさんはいきなり私を横抱きする。
な、なんだってーーーー???!!!
「キラさん!!重い!!重いから!!!」
「・・・軽いが?ナルはもう少し食べた方がいい」
「いやぁ・・、キラさんと結婚してから、私大分食べるようになりましたよ?」
キラさんは涼しい顔で広いコンパスの脚を生かして、ベッドへ連れて行く。
あ、はい・・そういう事・・。
じわじわ顔が赤くなって、ニルギさんに「構い倒される」発言を思い出す。
「・・キラさん、早く騎士団に戻った方がいいと思います、けど・・」
「・・・今の内にナルといたい」
「・・・キラさん、私達ほぼ毎日一緒ですって!!!」
ううう、顔が赤いんだが??
そろっと見上げるとキラさんは、いきなりキスしてきた。驚いて顔を見ると、
「・・・これから、いられない」
「・・それは・・」
キラさんの水色の瞳がじっと見る。
それは反則じゃないか・・?
「・・・・すぐ戻ってくれるなら・・、その・・どうぞ?」
ううう、目がウロウロ泳ぐけど、言いましたとも!!どうじゃーい!?
キラさんは嬉しそうに笑う。
ああ、その顔が本当に好きですよ、見えなくなったら絶対辛い。辛いってもんじゃない・・。そんな事、考えたら泣きそうになって、キラさんの胸に顔を寄せる。
「・・・今だけ・・」
小さく、小さく呟くと、
キラさんは額に、瞼に、頬に、愛おしそうにキスしてくるから、胸がぎゅうぎゅうと痛くなる。一緒にいたい・・。離れたくない。戦いになんて行って欲しくない。傷ついて欲しくない。思わず涙が溢れると、キラさんはそこにもキスする。
「ううぅ〜〜・・・・・」
行かないで。
ここにいて。
そう言ったら、きっと泣き出しちゃうから・・そう思っていたのに、涙が出てきた。
キラさんは私を横抱きしたまま、ベッドに座る。
「ナル・・」
「泣きたくないのに〜・・・・」
「ああ」
「笑って・・送りたいのに・・」
「そうか」
「ごめんね、キラさん・・」
だめだ〜〜・・、涙腺が壊れて、ボロボロ泣いてしまう。
だって、怖い訓練を見て・・あんな時もあるって言われて・・、そうして戦争になるかもって・・。キラさんがいなくなっちゃったらって思ったら・・、怖いし、悲しいし、嫌だし・・。
キラさんは横抱きのまま、ぎゅっと抱きしめる。
「必ず帰るから・・」
泣きつつ、キラさんがちょっと困った顔をしてる。
・・そういえば、こんなに泣いてるの・・誘拐されたとき以来かも・・。ずっと鼻をすすると、キラさんがポケットからハンカチを出して、渡してくれた・・・。なんか、そんな些細な行動に思わず胸が一杯になった。
「・・・キラさん、大好き」
ヘラっと笑うと、キラさんは少しホッとした顔をしてから、柔らかく笑うから、なんだかまた泣けてきた。私から、キラさんにキスすると、キラさんは嬉しそうに笑う。
ニルギさんの言葉通り、構い倒されて・・、ちょっと赤い顔で騎士団に戻ったのだった。