騎士、結構男前。
翌日、赤ちゃんとライ君は一緒に出勤してきて、執務室の大人一同は今日もホワホワと癒された。
赤ちゃん、最高だな・・。
ニルギさんが赤ちゃんをのんびり抱っこして、「ウルキラの子か〜」とか言ってますけど、違いますからね?ニルギさんも相当な爺馬鹿になりそうだ・・なんて思ったら、ちょっと照れたのは内緒だ。
お昼休みに、ライ君とウルクさんも来て赤ちゃんのお世話をする。
この兄弟・・、本当に手慣れているな・・。
私は早く抱っこしたくて、お昼を一生懸命食べているとキラさんに心配される。いや・・、お昼を早く食べてるくらいですけど・・。キラさんの過保護っぷりすごいな。
ライ君は、ミルクを飲んだ赤ちゃんにゲップをさせつつ、
「団長さん、母親の方はどうでしょう・・?」
団長さんが、読んでいた書類をそっと机に置いて、静かにライ君と赤ちゃんをみる。・・え、もしかして見つかったの?みんな、一瞬動きが止まる。
「・・少し、事情があるようだ。今、連絡して家族の方が・・」
そう言いかけた時、ドアをドンドンとノックする音が聞こえる。
え、なに?ドキッとするとキラさんが、すぐに私を後ろに隠す。
団長さんは、少し苦い顔をして返事をすると、恰幅の良いあご髭を生やしたおじさんと、後ろに薄茶の髪をした女性が入ってくる。あ!あの髪色・・。
ライ君はすぐに察したのか、赤ちゃんを連れて私たちのそばへ来る。キラさんが静かに頷いて、そばへ来るように手招きする。さっきまで穏やかだった執務室が緊張に包まれる。
団長さんは、恰幅の良いおじさんと女性をソファーへ促すと、おじさんはどっかり座った途端話し出す。
「そこの赤ん坊は、娘が産んだ子で間違いはないが、養護院に入れる予定だったんです。うちはそれなりに商売が繁盛してましてね・・、娘を手を組む予定の方に嫁入りさせようと思っていたのに・・、これでして・・いやお恥ずかしい限りです」
ちらっと、娘と呼ばれた女性は赤ちゃんを見ると泣きそうな顔になっている。
瞬間、執務室の空気が変わる。
「お父様・・、ニキは私の子供です!養護院には・・」
「お前の旦那とやらはもう病で死んだんだ・・。フィアナ、お前は予定通り嫁ぐべきだった所へ行け」
「そんなの横暴です!!だから・・、逃がしたのに・・」
そうか・・、置いていったんじゃなくて逃がしたくて・・、それでウルクさんの家の前に置いたんだ・・。ウルクさんは、横でああ、納得!みたいな顔してる・・。一人緊張感がないな。
「お願いですから・・、ニキを・・」
涙がとうとう溢れたフィアナさんを見て、胸が痛む・・。
キラさんは、そっと私を振り返る。
キラさんは静かに目配せして団長さんを見ると、団長さんはものすごい外面を発揮して、薄く笑っておじさんを見る。
「・・・お嬢さんは、納得していないものをこちらとしても看過することはできません」
「騎士団は子供を奪うのか?!」
「そうではありません。それにフィアナさんは確かにお嬢さんかもしれませんが、物ではない。彼女の意思を尊重しないような行為は、認められません」
おお、団長さん!!もっとだ、もっと言ってやれ!!
「お父様!!私はニキの母親です、この子を育てたいんです!」
「女一人で子供が育てられるものか!!」
おじさんはフィアナさんを怒鳴りつけて、叩こうと手を振りかぶった瞬間、
ウルクさんがその手を止めた。
え?
みんな、一瞬時が止まった。う、ウルクさん???
ウルクさんは、フィアナさんをにっこり笑って見て、
「じゃあ、俺と結婚しましょう!赤ちゃんも、あんたも俺が養います!」
「「「「「「「 え????!!! 」」」」」」」
執務室の全員の声が重なった。