黙して語らない騎士、理解する。
程なくお医者さんがお昼を持って戻ってきたので、私は食堂へ昼食を取りに行った。
と、キラさんがこちらへ歩いてくる。
うん、すごい後ろから花が出てる・・。めっちゃ嬉しそう。
なんだかそんなキラさんが可愛くて、私は思わず笑ってしまう。
「ナル」
「キラさん、お疲れ様です。怪我とか・・大丈夫ですか?」
「ああ」
キラさんが小さく微笑む。良かった。無事が何よりです・・。
「今お昼を取りに行こうとしてたんです。すみません・・遅くなっちゃって」
「大丈夫」
そう言いつつ、食堂の方へ二人で歩いて籠を受け取ると、キラさんが籠を持って手を繋ぐ。安定の無言。まぁわかってますけどね・・。サクサクと芝生の上を歩きながら訓練場を見る。
「訓練・・、どうですか?またああいう練習するんですか?」
「いや、個別で弱い所を訓練するのみだ」
「・・そうですか」
ちょっとホッとした。あの訓練を知ってしまうと心臓に悪すぎる。キュッとキラさんが手を握る。何かあった?と思って見上げると、キラさんが嬉しそうに笑ってる。
「ナルが心配してくれるなら、訓練もいいな」
「・・・キラさん、私は真剣にいつだって心配してるんですからね?」
「ああ」
本当にわかってるのか?この人、強すぎるらしいから・・。
「魔術師さん達って、やっぱり強いんですか?」
一緒に木陰に座りながらそれとなく聞いてみた。自然に、自然に・・と、思いながら籠の中のパンをキラさんに渡す。本日は分厚いハムのサンドイッチと・・・ピクルスあった〜〜〜〜!!!!キラさん、目ざとく見つけてるし!!
「魔術師は、王都で強いだけあるな・・」
「そういうのわかるんですね」
「魔術はニルギに習ったしな・・」
「あ、そうか・・」
パンの包みを開けて、一口かじる。うん、分厚い・・一口噛むのに苦労する。
「・・また来る事って、あるんですか・・?」
「どうだろうな、一緒に遠征に行く可能性はあるが・・こうした視察は珍しいからな」
「そうなんですか?」
「王都の騎士団は、こちらをあまりよく思ってない」
「言ってましたね・・・団長さん」
同じ国で、同じように守ってるんだから仲良くすればいいのになーと、ちょっとぶすくれた顔でサンドイッチを食べていると、キラさんが小さく笑う。
「・・・・なんですか?」
「ナルは優しいな」
「・・・?なんでそうなったんでしょう?」
「どちらも心配してる」
それは、ルピスさんとキラさんの事でしょうか?
でも、これ・・言っていいものか?悩む!!ええい!女は度胸だ。
「・・キラさんも、ルピスさんも、どっちも心配してます、大事ですから」
思い切って言ってみた!!!ど、どうだ?!!
キラさんの顔をじっと見つめると、キラさんは小さく微笑んだ。無表情だけど・・私にはわかりますよ?そっと手で頭を撫でてくれた。
「そうか・・」
「はい」
いつもの返事だけど、ちゃんと通じてるんだなって思ったら・・・ちょっと気持ちが落ち着いた。うん、ほんの少ししか会ってないけど、どっちも心配だ。お兄さんじゃなくても、普通に良い人だし。
「ナル」
「はい」
「これを・・」
キラさんがピクルスを指差す。食べさせろと・・?
「キラさん、指なめるじゃないですか?」
「舐めない」
「本当ですか!?ちゃんと食べますか?普通に!!!」
普通をだいぶ強調しましたとも。
以前、アーンて何も考えずやっちゃって、そのまま指を舐められて大変だったんだから!!思い出すだけで顔が赤くなる。
「食べる」
「普通ですよ?!」
もう一回念を押したからな?!
人参のスティックを、そっと持ってキラさんの口に持っていく。
あ、って口を開けて食べるキラさんにドキドキしてるけど、野菜は食べて欲しいし・・・。うううう〜〜〜〜〜、恥ずかしいんですけど!!!
唇が指の近くに来たら、さっと指を離す。
と、キラさんがちょっとつまらない顔をする。・・いや、そんな顔をされても困りますけど?
「ナルもう一回」
「か、勘弁して下さい〜〜〜〜!!!!」
訓練場に私の情けない叫びが響いたのは言うまでもない。