黙して語らない騎士と夫婦。
話し合いが終わると、明日の訓練のメニューも組むそうだ。
ま、まだやるの???
お茶を淹れつつ、私は聞いているだけでドキドキしてしまう。
ルピスさんと団長さんが、普通に会話しているその横でラフさんと、キラさんが話をしている・・・。なんか不思議な光景だなって思ってニルギさんをちらっと見ると、猫のようにニンマリ笑う。はい・・、ひとまず黙ってまーす。
「じゃあ、明日はこのメニューでいきましょう。今日はこれで終わりにして、ゆっくりして下さい。ありがとうございましたルピス殿」
「はい、ありがとうございます」
団長さんとルピスさんの会話は終わったらしい。
ハッとしてそちらを見ると、ルピスさんは部屋を出ていった。
「と、いうわけで・・私達も今日の訓練は終わりだ!明日も訓練は大変だし、皆休んでくれ」
団長さんが私達をぐるっと見回してそう話す。
ちょっと待って・・その机の書類はどうするんだ・・?山だぞ?
「・・団長さん、書類は?」
私が聞くと、わかりやすいくらい目を逸らす。
「・・・い、今から?」
皆、その場で一斉にため息が出た。団長さんがちょっと焦った顔で皆を見るけど、私は構わず団長さんの机の上に置いてある書類を取る。
「・・・あんな訓練して、疲れてるのは団長さんも一緒でしょ?だったら、手分けしてやって終わりにしましょう。嫌ですよ、ルーナさんに疲れ果てた団長さんをお任せするの・・」
そういうと、ニルギさんが爆笑する。
ラフさんとライ君とフランさんは小さく笑うし、キラさんは・・・無表情である。
「キラさん、片付けが終わったら迎えに来てくれますか?」
「ああ」
「じゃあ、ちょっとだけやっちゃいます」
「わかった」
キラさんは静かに頷いて、団長さんを見て、
「・・・・手早く」
「わかった!!わかりました!!!」
団長さんは焦った顔で書類を確認し始めた。・・うむ、よろしい。
皆笑いを噛み殺してるけど、思いっきり笑ってやって欲しい。
キラさんを見送ってから、皆で書類整理と確認を大急ぎでやって早く終えた。ほら〜、みんなでやったほうが早い!という顔を団長さんにしたら、机に顔を突っ伏して、
「ナルさん、優しいけどウルキラと同じでスパルタ・・」
「まぁ・・・、夫婦ですし」
・・・ちょっと照れ臭いけど、そう言うと団長さんがちょっと面白そうに笑った。
そんな会話をしていると執務室のドアをノックする音が聞こえて、団長さんが・・
「旦那の登場で〜す」
と、言ったら本当にキラさんだった・・。そういえば団長さん気配わかりましたね。キラさんは、私の前に来ると無言で手を繋ぐ。一言・・、あの本当に頂けるとね?
「お疲れ」
「は〜い、お疲れ様!明日もよろしく〜!」
「お先です!お疲れ様でした」
皆に手を振って、執務室を後にする。
階段を二人で下りていると、キラさんが一度足を止める。
「ナル」
「はい?」
「・・・夫婦・・って・・・」
「あ、聞こえました?団長さんに私達似てるねって言われたんですよ。私のいた所では、夫婦になると似てくるって言われてたから、そう答えたんですけど・・。もしかして嫌でした?」
キラさんを見ると、嬉しそうに微笑んでる。
「嬉しい・・」
水色の瞳が蕩けそうに見てくるから、心臓に悪い。
・・うう、そんな事で喜んでくれるの?いいの?
キラさんが、静かにキスしてくるから・・思わず体が固まる。
「しょ、職場ではダメです!!」
「・・じゃあ家に帰ったら」
「・・・・それ、は・・」
そんなこと言われたら、寮か宿舎に泊まりたい・・。
家に帰ったらどうなってしまうんだ・・。
嬉しそうに手を繋いで下りていくキラさんを見て、いまだにドキドキする私は、夫婦・・なんだけど、まだなれないんだよねぇ・・、窓の外から夕日が見えるけど、同じような顔の色をしていたと思う。