表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黙して語らない騎士に花束を。  作者: のん
黙して語らない騎士と異世界人の日常編。
105/566

黙して語らない騎士は、寡黙すぎる。


緊迫の演習が終わって、見学していた私はようやっと力が抜けた。

いや、演習してたのはキラさん達なんだけど。


団長さんやキラさん達は、王都の騎士さんや、魔術師のルピスさん達と、演習での課題を話し合って、次回の訓練の調整をするらしい。は、働き通しでない??


一旦執務室へ移動するというので、私はお茶を淹れるために先に戻ってお湯を沸かす。


ケトルを見ながら、知らずため息が出る。

・・あんな演習、本当に怖い・・。

滅多に魔術を使う魔物はいないらしいけど、火を吹くとか・・全然想像してなくて、いつもキラさんは早く帰って来てくれるから、あんな恐ろしい事をしてるなんて思わなくて・・。


団長さんの「命はいつまでもあるわけじゃない」っていう一言が、ずうーんと頭に落ちてくる。わかってる・・わかってるよー!!いきなり現実が突きつけられて、怖くて足がすくんじゃったんだよ!


ルピスさんの事もあるのに、あんな訓練に驚きすぎて・・いや、あんなん私の世界で見たって動揺するわ。後ろから給湯室の扉が開いた音が聞こえて振り返ると、ニルギさんが立っていた。



「お疲れ様、見ていて疲れたろ?」

「に、ニルギさん〜〜〜〜〜!!!」

「あんな演習、一年のうち一回あるかないかくらいだ、安心しろ」


「え、でも確実に一回はあるんですよね??現場はもっとハードな時もあるんですか??」


私は、思わずニルギさんに詰め寄ってしまった・・。

だって、だって、キラさん・・・心配だし。


ニルギさんは、小さく笑って私の頭を撫でてくれた。



「・・・ウルキラは幸せ者だな」

「・・・・キラさん・・、いつも当然のように帰ってくるから・・、全然わからなくて・・」

「そうだな、あいつナルに会いたい一心で帰ってくるしな」

「ああいう事・・・、現場ではあるんですか?」


小さくニルギさんは頷く。


「稀ではあるが、ある・・。だが大丈夫だ」

「・・何でですか?」

「会いたい奴がいるんだ。絶対帰ってくるぞ、あいつ」



キラさんの執念にも満ちた顔が思い浮かぶ。・・・確かに。



「以前、ナルが誘拐された時あったろ?」

「あ、はい・・」

「あの時、相当な人数がいて、結構強かったが全部のしたのはウルキラだ」

「え?!!!今、初めて知りました!!え?そんなに強い人達いたんですか?私、2人しかいなくて・・」


今になって驚愕の事実。

あ、そうだ・・汗も凄かったし、息も上がっていた・・。さっきは涼しい顔をしていたのに・・。



「・・・キラさん、ずるくないですか?」



なんか・・その話を聞いただけで、胸がぎゅうっと痛くなるけど、嬉しいんですが・・。ニルギさんは、ちょっと拗ねた私の顔を見て、小さく微笑んで頷く。


「だから、大丈夫だ」

「・・・はい、ありがとうございます」


気にかけてくれて、じんわりと胸が温かくなる。

ニルギさんに、にっこり笑った。


「お茶菓子・・、先に食べていいので、持っていくの・・手伝ってもらっていいですか?」

「もちろん。お菓子・・、クッキーあるか?」

「はい!ニルギ様のお気に入りのクッキー、もちろんご用意してございます」

「うむ、よろしい」


二人で笑いあって、トレイにお茶とお菓子を持って執務室の扉の前へ行くと、ノックする前にキラさんが扉をあけてくれた。


「ありがとう、ございます・・」

「ああ」


なんだか照れくさくて、ちょっと俯くとキラさんがそっとトレイを持って、テーブルまで持っていってくれた。す、すみませんね・・。またお礼をいうと、キラさんが優しく笑ってくれるから・・、さっきニルギさんに聞いた話もあって、なんだか抱きつきたい気分だったけど、我慢した。



・・・・なんか、今日は私がキラさんみたいだ。そんな事を少し思った。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ