黙して語らない騎士、訓練です。
さて、今日もキラさんは元気である。
昨日の夜、若干多めの野菜を入れたスープをちゃんと食べたので、褒めて育てる主義の私は頭を犬のようにワシャワシャ撫でてみた。
「偉いね〜!!キラさん、偉いですね〜!!!」
って・・・。
ほら、褒めてなおかつ甘やかせるかな?って思ったの。
ちょっと赤くなったキラさんが、あ、可愛いなぁ・・って思ったら、思いっきり抱きしめられて一瞬、気が遠くなった。騎士さんの力・・怖い。キラさんを褒める時は気をつけよう・・。
そんな事を思いつつ、キラさんと手を繋いで出勤である。
今日は、訓練場へルピスさんが視察に来る日だし・・、ちょっと心配なんだが、ニルギさんも見に来てくれるっていうし・・大丈夫かな?
キラさんを見上げると、水色の瞳がキラキラ光って私を見る。
・・・・・うん、好きだな。
「・・・キラさん、今日も頑張ろうね」
「ああ」
「私も頑張るから!!」
「・・・ナルは大丈夫」
「え、そう?私・・、ちゃんと出来てるかなってよく思うけど」
キラさんは、首を小さく振って、
「頑張りすぎる」
お、キラさんがそんな風に言うの珍しいな・・なんて思って、まじまじと見てしまう。
「仕事はいいから、俺を見て」
「・・・・・うん!!安定のキラさんだった!!!」
あっまい!!!朝から甘いんですよ!!!
思わず顔が赤くなると、キラさんは小さく笑う。
・・・もしかして、リラックスさせてくれた・・・?キラさんは、言葉は少ないけど、そっと気遣ってくれるから・・。
「・・・キラさんは、大人ですね」
「そうか・・」
キュッと手を握り返した。
・・・何かお返しができたらいいな・・と、思うのに全然出来そうにない・・。悔しい・・・。
キラさんと詰所の前で別れてから、執務室へと向かう。
掃除係と執務室での書類整理もすっかり板についたかなぁ・・、そんな事を考えつつ部屋へ入ると、ルピスさんとお供のルーンさん(大変失礼な人)がいた。
「お、おはようございます・・」
小さく会釈して、端っこにいたライ君のところへ行く。
「・・今日、こっちで何かあったっけ・・・?」
「いえ、予定では街へ視察して、午後訓練場の予定ですが」
小声で、そっとライ君の耳元で聞くと、ライ君は少し顔を赤くしながら教えてくれた。・・この部屋、暑い?
団長さんは、二人に何やら話すと私を見る。
お、何かな・・?
「ナルさん、この間の遠征での魔物の調査資料持って来てくれる?」
「あ、はい!分かりました」
「ライ君は、その時使った武器と、効果のあった魔法の資料お願い」
「はい!」
この間の魔物の話・・聞きたかったのか・・、ライ君と資料室でそんな話をしながら資料を揃えて、執務室へ戻る。どうも・・、午前中は遠征での話になりそうだな・・。
王都の騎士さん達が2人ほど執務室へ来て、先日の説明を始めていたので、私はお茶を用意する事にした。
給湯室にラフさんが通りかかったので、挨拶する。
「・・・魔物って、多いんですか?」
「最近な。王都側に出る事は少ないはずなのに、頻発してる。何十年か周期でそういう事があるんだ・・。ここ2・3年多いから・・、調査に来たとは言ってたな」
「そうなんですか・・」
キラさんは強いけど、そんな風に聞くとやっぱり心配だ。
ラフさんは私の曇った顔を見て、眉を下げて笑う。
「気持ちはわかるが・・、周期が終わればまた平穏な生活だ・・」
「・・・そうですね、キラさん一緒にいないと嫌がりそうですし・・、殲滅しそうです・・」
「確かに!」
否定しないラフさんに思わず笑ってしまった。
でしょ?キラさん、やってのけそうで怖いですよ・・。
お茶を入れたトレイを持ってラフさんと執務室へ戻ると、午後の訓練場の視察は魔術師と訓練に内容が変わっていた。
・・お、おやぁ・・・???大丈夫か??
あっという間に100話超えてました・・。