黙して語らない騎士の親。
とりあえずキラさんに助け出されたけど、なんで声を掛けたのかな・・
それもちょっと引っかかっていたりして・・。
キラさんと今日は執務室で、一緒にお昼を食べているけど、知らずため息が出ていたようだ・・。
今日はニルギさんも一緒だったのだが、ニルギさんは私を見て何かを感じたらしい。ニルギさんはキラさんを見て、
「ウルキラ・・、お前、兄の存在を知っていたか?」
「え、待って??そこからですか???」
思わず聞いてしまった・・。
待って・・、もしかしてキラさん、お兄さんの存在さえも知らなかった感じ???
キラさんは、少し考えて・・
「兄がいるのは知っていた」
「そんな感じ?!!」
ツッコむよね?ツッコンでいいよね??
なんでこの親子・・・、こんなノリなんだ・・・。思わず顔を手で覆ったよ・・。
「え、待って?キラさん、お兄さんと一緒に住んでたんじゃないの・・?」
私が恐る恐る聞くと、キラさんは少しまた考えて・・・
「・・住んでいたはずだが、記憶があまりない。俺の記憶はニルギと暮らし始めてから・・だな」
お・・、重い!!!
過去が重い・・!!!
ニルギさんは、なんか嬉しそうだし・・。いいのか?・・・いや、いいんだろうな・・この二人。
「・・・キラさんをニルギさんが拾ってくれて、本当に良かったです」
しみじみ言うとキラさんとニルギさんは、二人で顔を見合わせていた・・。そういうタイミングバッチリですね。なんだかそんな様子が可愛くて、思わず微笑んでしまう。
キラさんは私を見て、
「ナルにも出会えて嬉しい」
「あ、はい・・・それは、私も・・はい・・」
最後はどんどん小声になっていく。
キラさん、あなたの育ての親の前でそういうのは、ちょっと恥ずかしいんですけど??ニルギさんは、ニコニコしてるし・・!!うう、なんだこれ?!
ニルギさんは、ルピスさんの予定表をチラッと見る。
「・・明日、訓練場で訓練の様子を見るらしいな・・。ウルキラ、まぁ、大丈夫だと思うが・・、まぁ一応気をつけておけ」
キラさんは、それを聞いて静かに頷く。
うん・・この二人はなんというか本当親子だな〜・・。この信頼度・・ちょっと羨ましい・・。
「仲が良くて、いいなあ・・」
思わず呟くと、二人が小さく笑う。
・・本当、仲が良い。そんな様子に私まで笑ってしまった・・。
お昼が終わって、食堂へ籠を返しに行く。
と、王都から来た魔術師のお供の一人が、ジロジロと私を見てくる。
同じ黒髪の人なんで、ちょっと親近感・・。だが・・、
「お前、ディートリア様の親類か?」
「・・・ええと、貴方様は?」
いきなりな言い方に嫌味ったらしく名前を聞いてやった。まず名乗れ!!
私にそんな風に聞かれると思わなかったのか、その人は一瞬驚いてから、ジロッとこちらを睨む。おっと〜?やる気か?団長さんからの穏便に!がどこかへ飛んでいく。
「・・・ルーン・カシスだ・・」
「ナル・ディートリアです。親類といえば、親類です」
ただね〜・・微妙ですけどね。心の中でしか言いませんけど。
ルーンさんは、私を鼻で笑うようにジロジロ見る。相当失礼だぞ・・、私は睨みつけた。
「ふん・・・!こんな奴がルピス様の親類?魔力もないのに?」
「魔力があるとそんなに偉いんですかね?」
「な・・!貴様、ルピス様の親類だろうに、そんな事を言うのか?!」
・・・すみません、親類ですけど・・、全然お兄さんの事知らなかったし、私、異世界の人間なんで魔力がどーたら言われても、何も気にしないんですよね・・。思わず大きなため息をついた。
「・・そんな事、どうでもいいです。魔力がないとダメ・・みたいな考えも生き方も知ったこっちゃありません。私の大事にしていることは、そういう事でないんで・・」
「貴様・・!!」
ルーンさんという人が、睨んでくる。
後ろでは騎士さんたちが固唾を呑んでいる・・。
メンチは切れるけど、この先どうしようかな・・と思っていると、私の後ろから声が聞こえた。
「・・ルーン、やめろ。失礼した・・ナル・・さん?」
振り返ると、キラさんに似ているルピスさんが立っていた。
・・やっぱり似てるな・・。