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・INORI・  作者: 曖昧 もこ
2/8

占術師・橋本昂祈【INORI/02】

◎人を惹きつける占術師・橋本昂祈を知る小説◎

INORI/02


制服を受け取り私たちは更衣室までの長い廊下をしばらく歩いた。


「なんかめっちゃ広いっすね、この会社」


「うん、9階まであるみたいだし迷子になりそう」


長い廊下の突き当たり手前左に男性更衣室、右手に女性更衣室があった。


「やっと着いた!!じゃ、また後で」


「うん、食堂でね」


そう言葉を交わしそれぞれの更衣室へ向かった。そして更衣室に入った途端、香水やらコロンやら制汗剤の入り混じった香りが一気に押し寄せ私は思わずむせそうになった。床にぺたりと座り込んで手鏡を覗き込みながらメイクを必死で直す女性、スマホの動画を大音量で観ている女性、お菓子を食べている女性、体育座りで頭にタオルを掛け寝ている女性もいる。



ここは日本…??

どこで着替えるの??



「失礼します!!」


私は少し大きな声で挨拶して更衣室を探し始めた。

女性従業員らは、私の声には反応を示しチラッと見たものの興味なさそうにまたメイクなどを始めた。私が新人と分かっているだろうと思えたが全員無視、誰も声を掛けて来なかった。言い方が変かもしれないが従業員らはすっかり「新人慣れ」しているようだった。


(毎日大量に新人が入社してるのかな…逆に言えば大量に辞めて行く人がいるって事?まぁ干渉されない分だけ気楽かもしれない)


以前勤めていた運輸会社は男性社員が大半を占めていた為、私は約4畳程の更衣室を1人で使用していた。しかしこれから働く更衣室はまるでラッシュ時の山手線だ、更衣室というよりむしろ戦場に近い。

女の本性は更衣室にある、今日の私の気づきだ。



「今日からですか?更衣室は1番奥にあるよ」


着替えられず困っていた私に声を掛けくれたのは

目がくりっとした色白で小柄の可愛らしい女性で

機敏に動くリスを連想させた。


「ありがとうございます、更衣室がこんなに混んでいてるとは思わなくて…助かりました」


「昼休憩の時間帯だけいつもこんな感じだよ、昼だけ我慢だね」とカラカラ笑いながら女性は言った。

こんなに明るくて優しい雰囲気を持つ女性も働いている事が知れただけでも、ほっとした。


「一緒の現場になれたらいいね、頑張ってね!!

休憩終わるから私もう行くわ、またね」


「ありがとうございます!!」


私の言葉を聞き終わらない内に、くるりと背中を私に向けリスのように小走りで更衣室を出て行った。


すし詰め状態の従業員をかき分け、1番奥まで突き進むと淡いグリーンのカーテンが現れた。カーテンに直接黒の油性ペンで更衣室と書かれていたので思わず心の中で笑ってしまった。


アナログ過ぎる!!


クリーニングに出された制服の生地はノリが効きすぎていて鬼のように硬く首回りの生地が当たって痛かった。がとにかく食堂に戻らなければならない、日本離れした面白すぎる更衣室に私はパワーを全て奪われたようで、これから始まる新人研修を受ける集中力は既になくなっていた。


この更衣室はパワースポットなのか?鬼門なのか?


そんな事を思いながら、ノリの効きすぎたカチカチの制服を着て食堂へと向かった。



next chapter →【INORI/03】

・登場人物・


橋本 昂祈 Akinori Hashimoto(28歳・独身)

→世界一のギタリストを目指していたがある人物との出会いから占術に魅了され、沖縄で有名な占術家がセミナーを開催するという情報を得て急遽沖縄の浦添へと向かった。家元と呼ばれる占術のセミナーは橋本を更に夢中にさせ「占術と祈り」の密接な繋がりに興味を持った。占術とは相手の心を真摯に学び、己を深く知る為のものであり、幸せを願う事だけでなく突然この世を去った兄と繋がる事が出来る唯一の方法が祈りだと気づく。この気づきをきっかけに次々と奇跡が訪れるようになり、東京に戻った橋本は桐山 誓、石森 健騎と出会い本格的に占術師として活動する事を勧められ対面占術をメインとした占いカフェバー

【REZAR】(レサル)を新宿にオープンさせる計画を始める。REZARはスペイン語で「祈り」



桐山 誓 Chika Kiriyama (37歳・独身)

→長年勤めていた会社が吸収合併される事になり転勤を命じられるが辞退して退職した。この時2年交際していた男との別れも訪れ試練の日々を送る中、橋本と出会い占術の魅力を知りやがて夢中になっていく。



石森 樹騎 Tatsuki Ishimori (23歳・大学中退)

→左手首に星のタトゥーを入れている。両親が離婚し2人の弟たちを支える為大学を中退し派遣社員となる。桐山とは同期。趣味はビリヤード。

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