老衰
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閉められたカーテンから差し込む白い光が埃の積もった本棚や、本棚に収まりきらずに読み終えた本が山積みとなって乱雑に置かれた薄暗い部屋を照らす。
部屋の中央にある重厚な木製のデスクに腰かけた老人は、部屋を微かに照らす陽光を見て、読んでいたぶ厚い歴史書から顔を上げる。
「………もう朝か。」
溜め息混じりに口にしたその言葉は彼一人しか居ない部屋の中に広がるものの、本やカーテンに吸い込まれるようにして木霊する事もなく消えていく。
いったい自分がこうして部屋に籠り、幾日が経過したのだろうか?
本の世界から離れ、現実の世界に戻るや否、そんな考えが脳裏を過るものの、自分には読書以外にすべき事も無い。
十年前までは普通に仕事を勤めていたものの、定年で退職した後は趣味であった読書に没頭すべく、大量の本を購入した。
自分は結婚をしなかったため、子供も妻もいない反面、周りの友人達は20代で次々と結婚し、出産や育児などによって日常が忙しくなった事で会うことがなくなった。
工場で一緒に働いていた仕事仲間達もいたが、仕事における必要最低限のコミュニケーションを取るだけで済ませていたため、定年退職をした後は特に接点もなく会わなくなった……
両親も自分が50代の頃に他界し、兄弟もおらず、定年後も交流のある友人や知人も存在せず、現在の彼はまさに天涯孤独。
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