エロメイド
エロメイドです
「こちらが勇者様のお部屋となります。」
そう言って俺が通された部屋は、豪華絢爛、天蓋付きベッドがど真ん中に陣取り、それでも広々としたスペースを保持する大部屋だった。
床には縁が金色の、真っ赤な絨毯が敷いてあり、タンス、窓枠、天井の隅々に至るまできめ細やかな木彫りの装飾が施されていた。ベッドを見ると、皺1つない純白のシーツの上にバラの花びらが数枚撒かれていた。ぱっと見は悪趣味なラブホだ。生粋の童貞である為、ラブホには行ったことないが。
「この部屋……好きに使っていいのか?」
もちろんでございます、と不必要にエロティックな肉付きをした、黒髪ロングメガネメイドが答えた。
「いつまで…?」
「期間などございません。勇者様は我が国の救世主であり天使様であり、ゆえに永久的に我が国の国賓であると言えます。願わくば未来永劫この国に留まっていただけることを願います。」
「軟禁されるってことか……?」
「不自由をさせるようなことはありません。食事、睡眠、身の回りのこと全てにおいて、あなた様のお手を煩わせることはありません。望むことがあればなんなりと。この国の内であれば、どのようなことでもその意のままになると考えていただいて結構です。それはつまり……」
そういってゲキエロメイドはゆっくりじっくりとスカートの裾をつまみ、それをまたゆっくりと、それでいて迷いなく、その中身が半分ほどあらわになるまでたくし上げた。
「この私であっても。」
びゅっと音を立てて俺は鼻血を吹き出した。さながらマーキングのように満遍なくそのメイドに降りかかった。
「えぇ!?勇者様!?どうされたのですか!?」
エロ神メイドは驚いて駆け寄り俺の鼻をハンカチで抑えた。その声音は心配するようなものであったが、どこか、からかうようであった。どうされたのですか?など白々しい。俺がなぜ鼻血を散布したのか、全て分かっているのだ。
「その身に何かあったら、私は生きてはいれれません…!勇者のお付きを命じられた私は、すでに好み全て捧げる心づもりでございます。ゆえに」
そこでそっと耳打ちをしてきた。
「焦る必要はありませんよ……?」
そこでもう一度鼻血を吹き出した。
広間でのひと騒動ののち、俺はメイドに連れられ、部屋をあてがわれた。戦争の件や、俺への扱いなど疑問はあったが、ギークの騒動もあった為(完全に俺のせいだが)諸々の説明については日を改めるらしい。
鼻血を吹き出したためそのまま最後まで、とはいかなかったが、メイドは俺の着替えを甲斐甲斐しく手伝ってくれた。
下着の1つに至るまでだ。
先ほどの騒動の中でビビりすぎて少し漏らしていたにもかかわらず、嫌な顔1つせず。
完全に俺の生まれたままの姿を見たわけだが、微笑みを崩すことなくゆっくりと俺にパンツを履かせた。
もはや赤ちゃんプレイ。
鬼のように興奮した。
俺の部屋は先ほどの王の間らしきものがあった本殿から抜け中庭歩いて10分ほどの(城は本当にでかい)東の塔のテッペンにあった。素晴らしい部屋だ。
あてがわれた部屋や、イメクラよろしくのこのシチュエーションを見るに、俺のことをどうやっても懐柔したいという思惑が見える。
一回死ぬ前の会話で、隷属契約がどうとか言ってたので、うまくいっているなら俺はどんな命令でも聞くようになっているはずらしいが、一応の安全策としての、この軟禁作とエロメイドだろう。
実際相手の言葉に対して、何か強制力がある感じもしない。
自由に行動することに問題はないはずが、
悔やまれるのは、やはり3つの願いの使いどころだ。
まずどうやったら願いが叶えられるかの説明もなかったし、おれが召喚した直後どういう扱いを受けるかの助言もなかった。あったらもっと慎重に行動していたし、あんなに痛い思いをすることもなかった。だいたいこの先どうするんだ。この国の連中は、俺に戦争をどうこうする力があると思い込んでるようだが。実際はステータスを読む以外なんの力もないと知られたらどうなることか。逃げ出さなければいけない。どうしよう。
どうしよう。
「……うぁぁぁぁ!!なんだよなんだよなんなんだよおおぉぉぉ!」
だんだんと我慢できなくなって叫んでしまった。
ベッドにゴロゴロしながらバシバシとめちゃくちゃに、駄々をこねるように布団を叩く。
これはストレスが溜まりすぎた時に俺がいつもやっている発散法である。
「あぁぁぁ!Aカップ!」
枕に顔を押し付けながら俺は叫ぶ。
「Bカップ!Cカップ!Dカップ!」
頭に、段々と豊満になっていく女性の体を思い浮かべながら叫んでいく。
「Eカップ!Fカップ!Gカップ!Hカップ!Iカップ!Jカップ!Kカップ!Lカップ!Mカップ!Nカップ!Oカップ!Pカップ!Qカップ……あ、Rカッ……ぷふふ……だはははははは!」
段々と現実感のなくなっていく頭の中の巨乳に、何これ?という気持ちが膨らんでいき、またこんなことを一人で叫んでいる自分に対して何してんの?という気持ちが強くなっていく。それが我慢できなくなったところで吹き出した。
「だはははは!……はぁ。落ち着くか。」
そうして何もかもどうでもよくなることで冷静さを取り戻すのだ。
俺はこれで地獄のような社畜時代を乗り切って来た。
そうだ、前の世界では死んでもいいと思えるくらい何の面白みのない、つらいばっかりの人生を送っていた。
それを全部真っさらにして、もう一回人生をやり直すチャンスができたと考えればいいじゃないか。これでも楽しい人生を送れなかったら、この人生には、最早何の未練もない。
逃げ出して、農民のような生活をしてもいい。毎日厳しい自然と戦いながらも、生きる歓びを探すんだ。童貞だって捨てたい。うん、目標ができた。
とりあえずはこの世界の情報が必要だ。最低限の知識を得て、計画をたて終わるまで、は救世主然として振舞ってこの城に居座るんだ。
さっきのゲキエロちゃんを毎日抱いたっていい。さっきは鼻血のせいで断念したが、慣れればいつかつづがなく童貞を捨てされるはずだ。最高だ。捨てた時点で死んだっていい。
よし、だいぶ吹っ切れて来た。
いいじゃんいいじゃん頑張ろう。
そうと決まれば
「ギークくんを助けにいくか……」
このままだと後味悪いもの。