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さあ踊れ  作者: 月夜見
2/3

ステップ〜2



 世界は暗いままだ。横たわっているらしい。

「おいっ、大丈夫かっ! すぐに救急車が来るからなっ」

「…は?」

「トラックに轢かれたんだよ。頭を打って血が出ているから動くなよ?」

 言われてみると右側頭部に鈍痛がある。ズキズキすると言えば良いだろうか。

「おーいっ! 分かるかっ、名前はっ?」

「…氷室夢人」

「氷室君、ストレッチャーに乗せるからねっ」

 どうやら救急隊の人らしい。ぼんやりとしか見えないから何とも言えない。

 そして救急車の中で応急処置がされたようだ。そんな気がした。

「学生証は? 携帯電話はあるかい?」

「…内ポケット」

 ごそごそと上着を弄る音が聞こえた。そして救急隊員と思しき男性の声。

 そこから気が遠くなった。


 意識が戻ってきた。まだ横たわっているようだ。さっき見た異様な夢を思い出した。

 目を開けてあいつがいたら嫌だと思ったが、良く考えたら目が見えないのだった。安心して目を開けた。

「…あれ?」

「お目覚め? レントゲンなんかの映像では脳に異常は無いって。脳波も正常よ。外傷があったくらいね。ほんの少しだけ縫ったから、今夜は泊まっていくのよ」

 馴染みのある女性の声と記憶している女性の姿を理解した。

「義母さん?」

「ええ、そうよ。…本当に事故によく遭うわねぇ。心配したわよ。勝手が違うから私がついていてあげますからね。お父様はもうすぐ来るから」

 目の前に手をかざして確認してみた。

「ええとですね、右目が見えるんですが…。左は見えないけど」

「え…? 本当? 見えるのっ? 私が見えるっ? 夢人さんっ」

 食われるんじゃないかと思ってしまった。それくらいの勢いだった。

「右目は見える…。何年ぶりかな?」

「良かったわ…。奇跡が起きたのね…」

 そう思っても良いだろう。今ははっきりと見える。遠近感はまったく無いが。

 義母さんは病室を飛び出した。見回してみたら個室だった。普通は大部屋だと思うが。相変わらず過保護なのだ。嬉しい反面、鬱陶しかったりする。

 看護士さんがなにやら紙を持って入ってきた。御馴染みの黒いしゃもじも見えた。視力検査だ。簡単に済ませて後日再検査するそうだ。

「…右目は1.5ですねぇ。左目は測定不能です。…お母様の言われた事が事実なら奇跡と思っても仕方ありませんわ」

 不思議な言い方だ。本人にしか分からないのだから仕方ないと思う。



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