敵は巨大な猿の物の怪? 宇宙人?
真剣な顔つきで、ツインテールの水着姿になるように迫って来る男二人。
「えぇーっと。そんな姿、逆に目立ちすぎると思うんですけど」
「では、この家の中だけででも」
村雨くんはきっぱり言い切った。
「それって、私が姫と分からないようにって言うのと、関係なくない?」
「いえ。
ここに、敵の追手が現れるやも知れませぬ」
「どんな極端な設定ですかっ!」
「どのような場合も、備えあれば憂いなしかと」
村雨くんはたじろぎもせず、言い切っている。
ある意味、その態度立派かも。なんて、思っちゃいそう。
「確かに敵がここにやって来るかもだけど、そんな時は村雨くんが敵をやっつけてくれるんじゃないのかな?」
「現れた敵にもよりますが、無理な場合もあります」
きっぱりと、村雨くんは言い切った。
まあ、現れた敵が一人で、村雨くんレベルの男の子なら勝てるんだろうけど、大人が現れたなら、それが一人であったとしても、無理っぽい。
そう言うことなんだと思う。
ある意味、村雨くんは真実を語ったと言う事なんだと思う。
と、思った時、ちょっと意地悪な質問をしてみたくなった。
「えぇーっと。村雨くん、私に言わなかったかな?
いざお姫様に危機が訪れた際には、封印を解き、その力をご覧に入れましょうぞって。
封印を解いて、敵を倒してはくれないのかな?」
そう。封印の話はどうするの?
そう思って、村雨くんに質問をしたと言うのに、家の主の方が口を挟んできた。
「姫はご存じないのかも知れませぬが、本当の敵は蟇田素藤や、その軍勢ではござりませぬ。
素藤は妻である妙椿に操られているだけであり、真の敵は妙椿でございまする」
家の主の話のつながりはまだ見えていないけど、素藤は妻の言うとおりに動いているだけで、本当の敵はその妻 妙椿であるらしい。
まあ、これは私の時代でもよくある話だけに、頷きながら私は言った。
「いつの時代もそうなんだねぇ。
私んちも、お母さんに言われて、お父さんがお風呂掃除したり、ごみを捨てたりしてたもん」
「おふろってなんでしょうか?」
「あ、気にしなくていいよ。
要は家の中は奥さんが強いって事なんだよね」
納得する私に、家の主が身を乗り出して、話を続けた。
「そんな生易しいものではありません。
妙椿は巨大な猿の物の怪で、素藤はその物の怪の幻術に操られているのです。
もし、妙椿がここに現れますれば、これを倒すことは、村雨ではかないますまい」
私が思い浮かべたイメージは的外れだったらしい。
女の人が、実は物の怪?
しかも、巨大な猿?
私の頭の中に満月の夜空の下、胸を叩きながら、暴れまわる巨大な猿の二次元的な光景が浮かんだ。
「えぇーっと、それって、物の怪と言うより、宇宙人なんじゃないかな?
サ○ヤ人とか何とか言う」
「うちゅうじん?」
「あ、ごめんなさい。それも気にしなくていいよ。
その猿の物の怪と竜だったら、どっちが強いのかな?」
「猿です」
村雨くんはきっぱりと言ってのけた。
「えぇーっと、やっつけれないと言うのはつまりここに妙椿が現れた場合、竜よりも強い相手だから、封印を解いた村雨くんでも勝てないって事でいいのかな?」
私の問いかけに、村雨くんはきっぱりと頷いてみせた。
まあ、確かにその猿の物の怪と言うのが本当の事だったとしたら、頭の中で戦っているのであろう竜とは違い、勝てるはずはないに違いない。
私も、遅れて数回頷いてしまった。
「しかし、姫、倒す術がない訳ではございませぬ」
家の主は真剣な顔つきだ。
「えぇーっと、しっぽをぎゅっと握るとかかな?」
私的には、そんな感じが思い浮かんだけど、家の主は真剣な顔つきのまま、首を横に振ってから、私を指さした。
「姫が戦われるのです!」
「えぇーっと、なんで私が?」
思わず目を点にして、小首を傾げてしまった。
「姫様はあの話を聞かされておりませぬのですか?」
そう言って、この家の主がこれまでの話を語り始めた。
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