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水着にツインテール姿を勧める男二人

 私たちに今なら間に合うと言った男の言葉は正しかった。

 敵の軍勢が城に攻め寄せる前に、私と村雨くんは城を離れて、村雨くんが生まれたと言う村に無事に落ち延びる事ができた。


 そして、今、村雨くんが生まれたと言う村で一番の有力者と言う人の家に転がり込んでいた。


 有力者と言うだけあって、他の潰れそうな家に比べたら立派には違いないんだけど、私の時代の家に比べたら、ぼろって感じ。

 玄関を入ったところには土間があって、その奥に二間があるだけ。


 そんな部屋の一間の一番奥に私が座っている。

 私は姫じゃないけど、体が姫の体なので、誰もが私を姫として扱ってくれている。

 私の前にこの家の主が、そこから少し下がって村雨くんが座っていた。



「姫様、やはり城は落ちたようで、城の中にいた者たちは殿やお方さまをはじめ誰一人として助からなかったようです」

「そうですか」



 私的にはご先祖様に連なる人たちなのかも知んないけど、見た事も話した事も無い人たち。はっきり言って、精神的な負担はないけど、それだと不自然なので、悲しげな表情だけ作って、この家の主の言葉を受けた。



「しかしながら、姫が見つからなかったため、兵を繰り出して姫を捜索しているようです。

 姫を捕える事は敵の大きな目標のはずですから」



 なんで?

 それをたずねる前に、村雨くんが身を乗り出して言った。



「では、しばらくの間、姫様は容姿を変えた方がよさそうですね」



 そう言いながら、村雨くんは懐に手を入れてごそごそしている。


 何?


 と、村雨くんを見つめていると、村雨くんは懐から紙切れを取り出し、それを床に「バン!」と、広げて置いた。

 それは私が村雨くんにあげた私がイラストを描いた二枚の紙だった。



「このような風にされれば、姫とは分かるまいかと」



 村雨くんの表情はマジ。

 そして、私をじっと見つめていて、私が受け入れるのを待っている。


 確かに姫とは思われないかも知れない。

 でも、この時代にそんな容姿をしていたら、目立ってしまうのであって、いい作戦とは思えやしない。


 きっと、村雨くんがこんな事を言いだした理由は、単に私のそんな姿を見たいと言う欲望を正当化するチャンスと考えただけに違いない。


 拒否!


 その言葉を口にしようとした時、この家の主が村雨くんが広げた二枚の紙を覗き込みながら、きつい口調で言った。 


「なんじゃ、これは?」



 家の主の顔は歪んでいる。

 それはきっと、怒りに違いない。

 そう感じた私は思わず「うんうん」と、心の中で頷いて、家の主に期待した。


 ぶち切れて、村雨くんを叱ってくれる。

 そんな予感を抱いたけど、それはすぐに裏切られた。



「何かこう、胸が疼くような絵じゃなぁ。

 このような姿に、姫がなられるなら、協力を惜しまないぞ。

 何しろ、萌えぇぇぇじゃからのう」

「どうして、あなたまでそんな萌えぇっとか言うのかなぁ」



 二次元の女の子に興味を抱くのは村雨くん以外にもいて、やはり意味不明な「萌えぇ」を言う事にちょっとあきれ顔で言った。



「姫様の事を思えばこそでございまする」

「でも、さっき、萌えぇとか言ったよね?

 それって、自分の感情だと思うんだけど」

「いえ。それはまあ。

 ともかくでございまする」

「えぇーっと。今、都合が悪くなったので、会話を変えようとしている?」

「このような容姿を、姫様のような方がされるとは思いますまい。

 蟇田の追手から、逃れるには効果的かと。

 特にこれは」



 そう言って、ツインテールで巨乳な水着姿の女の子を描いた紙を指示してきた。

 その後ろで、村雨くんは唾を飲み込みながら、うんうんと頷いている。



「ごめんなさい。

 私、そんな胸大きくないんだよね」



と、言った後で、今の体が私の体でない事を思い出した。

 体を反転させて二人に背を向けると、着物の中に手を入れて大きさを確かめてみた。

 巨乳ではなかったけど、元の私のより一回り、いえ、二回りは大きい。

 この本物の姫は身分が高いとは言え、この時代の女の子。きっと私の時代から見たら粗食なはずなのに、負けてしまった。



「えぇーっと。あれだよね」



 二人に向き直ってはみたけど、敗北の動揺が抑えられず、続ける言葉を見つけられなくて、間を置いて考えを整えてみる。



「と、と、とにかく、髪型だけはやってみるよ。

 うん、うん」

「髪型だけですか?」



 目の前の二人ががっかり感満載で言った。



「はい。髪型だけです」

「それでは効果が薄く、敵に見つかってしまうかと」



 二人そろって、マジ顔で私に迫っている。

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