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形勢逆転

 広い河原に横たわる竜の死体。

 血に染まった七人の八犬士たちの死体。

 立っているのは村雨くんただ一人。



「村雨丸。天晴じゃ」



 足利成氏が歓喜に満ちた声上げて立ち上がった。

 近習の一人が村雨くんの所に駆け寄ると、その手から村雨丸を奪い去り、足利成氏の下に駆け寄って行った。


 村雨くんから奪った妖刀 村雨丸を両手で捧げるようにして、足利成氏に差し出すと、妖刀 村雨丸を抜き放ち足利成氏は右手に構えた。

 血の名残をとどめた妖しい金属光沢を放つ刀身をまじまじと見つめる足利成氏の表情は満足げだ。



「これでもはや物の怪たちを恐れる事もない。

 全ての物の怪たちを根絶やしにできようぞ。

 それに天下もな。

 くっくっくっく」

「上様」



 村雨くんが怪我した足を引き摺りながら足利成氏の下に駆け寄ると、平伏しながら言った。



「坊主、どうした。

 村雨丸から解放されても、わしに付き従いたいと言うのか?

 ならば、拾ってやってもよいぞ。

 くっ、はっはっはっははは」

「上様。

 私はまだこの坊主から解放されておりません」

「なに?

 どう言う事じゃ。

 八犬士全てを倒し、里見の姫も倒したではないか」



 足利成氏はうろたえ気味に、手にしていた村雨丸を村雨くんに差し出した。

 両手で恭しく受け取る村雨くんに、足利成氏は新たな命を出した。



「まだ妖力を奪いきれなんだのやも知れぬ。

 奴らの体をもう一度突き刺してまいれ」

「ははっ」



 そう言って、駆けだした村雨くんが突然立ち止まった。



「い、い、い、嫌だ」



 どもりながら、目を泳がせている。

 本当の村雨くんが、村雨丸に抗っているらしい



「小賢しい」



 足利成氏がそう言って、近習に目配せをした。

 近習の一人が村雨くんのところまで駆け寄ると、背後から蹴り飛ばした。



「さっさと任務を果たさぬか!」



 地面に村雨くんが倒れ込んだ。

 立ち上がった時、村雨くんの泳いでいた目は止まっていて、しっかりとした口調で言った。



「お任せ下さい」



 村雨丸が村雨くんを抑え込んだらしい。

 そのまま村雨くんは信乃ちゃんたちの体を次々に刺し貫いて行った。



「どうじゃ?」

「何かが違う気が」



 足利成氏に村雨くんが答えた。


 何かが違う。

 でも、その何かは分かっていないらしい。


 

 広い河原に霧が流れ込み、足利たちの視界を一気に奪った。



「何事じゃ?」



 足利成氏の声は狼狽気味。



「これは幻術?

 でも、吹き払えない」



 村雨くんが自分の幻術で相殺しようとしてできないでいるらしい。

 そろそろ私の出番。



「全て分かっちゃってたんだな」



 広がる白い霧の中、私の声が響いた。



「小娘、まだ生きておったのか!」



 足利成氏が呻くように言った。

 視界を奪っていた白い霧が消え去ると地面に倒れていた信乃ちゃんたちや私の体は無くなっていた。



「どう言う事じゃ」



 足利成氏はきょろきょろと私たちの姿を探し始めた。

 近習たちや村雨くんも私たちをきょろきょろと探し始めた。



「ぐっ!」



 村雨くんがうめき声を上げて、跪いた。



「君、動きが速すぎ。

 ちょっと重力を強めたから、そこでちょっとの間、じっとしていてね」

「お前たち、どこから現れおった」



 少し離れた場所で整列する私たちに足利成氏が狼狽気味の声を上げた。

河原で倒されたはずの七人の八犬士と主人公は元気だったみたいです。

あと二話。最後までよろしくお願いします。

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