村雨くんの正体
ついに村雨くんの正体が明かされます。
私の喉元に向けられた村雨くんの刃先。
村雨くんの異常な速さから言って、逃げる術はない。
「えぇーっと。どう言うことかな?」
やっぱ敵だったみたいと思いつつも、とりあえず村雨くんに聞いてみた。
「私は村雨丸。
成氏様の命により、物の怪全てを葬る。
特に八房は許し難き敵」
妖刀 村雨丸を名乗った。
目の前の男の子は妖刀 村雨丸が変化したものって事?
確か村雨丸は八房への怨念を抱いているとか。としたら、私を許してくれるなんて事はなさそう。
でも、とりあえず村雨くんにきいてみた。
「えぇーっと、いざと言う時には私を守ってくれるんじゃなかったのかな?」
「それは妙椿を倒すまで。
い、い、今はお、お、お、お前を」
目が泳いでどもり出した。
何なの、この子。
じっと注目していると、私の喉元に向けられていた刀がぶるぶると震え始めた。
「い、い、い、嫌だ」
どもるのが止まったかと思うと、泳いでいた目も止まり、はっきりとした口調で言葉を続けた。
「私はありすを守る」
そう言い終えた瞬間、村雨くんは私に付きつけていた刀を自分の足の甲に突き立てた。
見た感じ、刀はかなり深く突き刺さっている。きっと、刃の先は地面にまで突き刺さっているに違いない。
村雨くんの足から血が流れ出ている。
「あ、あ、ありす。足を封じている内に、逃げて」
苦痛に顔を歪めながら、村雨くんが言った。
「何と言う気の強い坊主じゃ。
村雨丸の呪縛に抗うとはのう。
村雨丸。今はその坊主を表に出す時ではない!
八房への恨みを思い出せ!」
足利成氏が言った。
「お、お、お、お前を殺すまで」
再び目を泳がせた村雨くんが、そう言って、刀を私の喉元に突きつけて来た。
村雨くんは普通の人間の少年。
その少年に村雨丸が憑りついているらしい。
きっと、子供っぽいのは村雨くん。きっと、信乃ちゃんたちを打ち破った剣士も、村雨くん。
でも、私を小ばかにしたような態度は村雨丸だったのかも知れない。
どっちがどっちなのかはっきりとは分からないけど、目を泳がせたりどもったりと言った挙動は、きっとこの二人が体の主導権を奪い合っている時に違いない。
村雨くんが物の怪やただの妖刀が変化したものではなく、本当の人間で自らを傷つけても私を助けてくれようとした事を考えれば、私がすべきことはこの村雨丸を倒して、村雨くんを解放してあげる事。
「足利さん。一つ教えてくれないかな?
村雨丸に取りつかれているこの子を解放してあげるにはどうしたらいいのかな?」
「いいだろう。
死に土産に教えてやろう。
その刀、村雨丸には八房に破れ、自らの妖力を奪われた物の怪たちの怨念が込められておる。村雨丸はその怨念の力を持って、小僧を依代として呪縛しておるのじゃ。
つまり、村雨丸が小僧を解放するのは、八房の力を持つ者たちの体を刺し貫き、奪われた妖力を全て取り戻すと共に、八房の体を貫き、その血を吸った時じゃ。
つまり、後はお前を手にかければ、小僧は解放される」
「なるほど。そう言う事だったんだ。
じゃあさ、例えば今、この村雨丸って刀を折ったらどうなるのかな?」
「村雨丸はまだその坊主と一体となっておるのじゃから、坊主も死ぬ事になろう」
「いろいろ教えてくれて、ありがとう」
とりあえず、力押しはできないらしい。
としたら、方法は一つ。
「村雨丸。坊主が再び邪魔をせぬうちに始末しろ!」
足利成氏がそう言い終えた時、私の喉を村雨くんの妖刀が貫いた。
ぐはっ!
口から溢れ出る血は止まらない。
そんな私に刀を突きたてたまま、にやりと笑う村雨くんの顔は、いつか見た殺人鬼と一致する。
村雨くんが私の喉に突き立てていた刀を引き抜いた。
ずしゃり。
地面にうつぶせに倒れ込んだ私の喉から真っ赤な血が広がり、地面を染めていった。
村雨くん、妖刀に憑りつかれた人間だったんです。
そして、まさかの最悪の結末?
「まさか」じゃないですね。活動報告でバッドエンドについて、質問させていただいていましたので。
で、結局、バッドエンド??
まだ続きます。




