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化け猫!

「ばすていとはなんですか?」



 信乃ちゃんが訪ねて来た。



「はっ! そうだった。

 こんなものがある訳ないよね」



 目をこすって、もう一度見てみた。

 やはりバス停がある。



「信乃ちゃん。あそこの丸いの見える?」

「はい。

 なんでしょうか? 

 初めて見るものなのですが、あれがそのばすていと言うものなのでしょうか?」

「でも、こんな時代にあるものじゃないんだよね」



 私がそう言い終えた時、強い風と眩しい光を感じた。


 目を光らせたいつか映画の中で見た猫バスがやって来て、バス停の前で停止した。

 猫バスのドアが開くと、昭和っぽい複数の人が降りて来た。


 猫バスの目はもう光っていなくて、私たちを誘うかのように視線を私に向けた後、開かれたドアに視線を移した。



「乗っちゃいます?」



 そんな気分になった時、どこかで誰かが刀を抜くような音が聞こえた。


 チャッ!


 その瞬間、目の前の猫バスはかわいい猫バスから、禍々しい化け猫に姿を変え、ドアと思っていた所は、化け猫の牙が唾液で怪しく濡れた大きく開いた口に変わった。



「何?」

「化け猫です。

 下がってください」



 そう言ったかと思うと、現ちゃんはその禍々しい化け猫の左目を刀で突き刺した。



「ふんぎゃぁ」



 そんな声を上げて、化け猫は小さな猫に姿を変え、木々の中に逃げ込んで行った。



「化け猫が猫バスに化けていたって事?」



 バス停の標識があった場所に目を向けてみた。

 そこには枯れた木が一本立っているだけだった。



「現ちゃん、これって、どういう事なのか説明できるかな?」

「私たちはあの化け猫の幻術にはまっていたのでしょう。

 あのままでしたら、自ら化け猫の口の中に進んで入って行くところだったかも知れません」

「じゃあ、なんでその幻術が解けたのかな?」

「それは分かりかねます。

 あの化け猫自らが解いたと言うことなのかも知れません」

「自分から解くかなぁ。

 村雨くんは幻術を使う妙椿に詳しいんだよね?

 幻術を破る方法ってあるのかな?」

「そ、そ、それは、それはですね。

 わ、わ、私には分かりません」



 のけぞってはいないけど、目は泳いでいる。

 何か中二病的な大言壮語を吐いている訳でもなく、否定的な発言だと言うのに、どうしてどもる??


 変な村雨くんの態度に小首を傾げずにいられない。



「でもね。八犬士が揃えば妙椿を倒せるんだよね?

 妙椿の幻術を破る必要があると思うんだけど、違うのかな?」

「げ、げ、幻術をや、や、や。

 わ、わ、私には分かりません」


 再び私は小首を傾げた。


 あの化け猫が本当の姿を現す直前、刀を抜くような音がした気もする。

 でも、刀を抜いたところで、幻術を破れる訳なんてないだろうし。

 現ちゃんが化け猫に襲い掛かった時、他の八犬士たちも抜刀していた。

きっと、化け猫の正体に気づいたのと同時に誰かが抜いただけに違いない。


 そこまでは正しいはず。

 でも、化け猫が幻術を解いた? 解かれた? 理由は分からない。

 なんだか危機を乗り越えた理由が分からないと言うのが多い気がする。



「ともかく、急ぎましょう。

 日が落ちてしまいます」



 信乃ちゃんの言葉に空を見上げた。

 元々、木々に光を遮られ、薄暗かった空間が少しだけ薄暗さを増し、青く白い光に赤みを帯びさせてきている気がした。



「本当に。急ぎますか」



 そう言って、私は歩き始めた。

 さっきまでの疲れは、近づいてくる闇と言う恐怖に押し流され、早足気味に歩いていく。


 でも山は広かった。

 人気のある町にたどり着く前に、空は夜の闇の気配を色濃くしていった。



「あそこに岩窟があります。

 中を見てきます」



 信乃ちゃんはそう言うと、駆けだした。


 確かにその先に岩窟がある。

 入り口の高さは男の人の高さくらい。

 幅は人が五人ほど横並びしたくらい。


 奥がきれいで広ければ、寝泊りすると言うのはありかも知れない。

 そして、戻って来た信乃ちゃんが、その奥に十分な広さの空間が広がっていると言ったので、私たちはそこに泊まる事にした。

かわいい猫バスが化け猫だったなんて……。

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