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巨大竜と戦っているらしい村雨くん

 私の冷たい視線と言葉に、一瞬きょとんとしていた男の子が口を開いた。



「のうみそって、何ですか?」


 

 その単語に引っかかっていたらしいけど、そんな説明をする気は私には無い。



「えぇーっと、そんな事より、私の質問に答えくれませんか」



 それから、私は自分が知りたかった事を、この男の子に質問した。

 当然、私がこの体の元の持ち主ではない事を悟られないよう、注意しながら。

 そして、得意げに知っている事を話してくれる男の子から、いくつかの重要な事が分かった。


 この時代は足利幕府の時代らしいって事。

 私は浜路姫と呼ばれる里見家の姫らしいと言う事。

 で、この容姿は元の浜路姫のものらしい。


 この時代に来る前の私の名は里見ゆかり。

 私の家はずっと昔から続く里見の家系に繋がっていると聞いている。


 と言う事を考えると、ここは過去ではるか昔の祖先の城にいて、ご先祖様のすじに当たるであろう浜路姫の体に、私は転生したらしい。


 そう言えば、私がこの時代に来るきっかけとなった、私が助けた子犬は私に「来てもらいます」と言ったっけ?


 何のために?


 小首を傾げてみても、答えは思い浮かばない。

 そして、その答えは目の前の男の子からも得られなかった。

 ここで泣き叫んでも、怒ってみても、問題は解決しないに違いない。



「うーん」



 腕組みして、考え込む私をじっと男の子が見つめている。

 そう言えば、この子の名前、まだ聞いてなかった。



「えぇーっと。名前教えてもらっていいかな?」

「私は村雨むらさめです。

 お忘れですか?」

「そう言う訳じゃないんだけどね。

 なんだか、かっこいい名だね」

「はい。

 ずっと隠しておりましたが、私は本気を出せば、天下無双の剣の使い手ですから」

「天下無双?

 そんな力があるの?」

「はい。

 あまりにも強力な力なので、いつもは封印しているのですが、いざお姫様に危機が訪れた際には、封印を解き、その力をご覧に入れましょうぞ」



 そう言うと、村雨くんはすくっと立ち上がり、剣を抜き去り構える格好をした。

 その表情は得意満面である。



「えぇーっと。私の危機の時以外には、力は出さないの?」

「いえ。時折、明より参りし、巨大竜と戦う時には」

「それって、口から火を吐いたりするの?」

「そうなんですよ。

 強力な敵で、口から火は吐くは、尖った爪で城でさええぐるわで」

「で、勝てそうなのかな?」

「何しろ巨大な敵過ぎて、私も本気を出さねばならぬのですが、二つの巨大な力がぶつかり合いますと、城や街さえ破壊してしまいかねないので、なかなか本気を出す事ができず、決着をつけれていないのですが、いずれ」

「へぇぇぇ。こんな時代にもいたんだね。

 中二病な男の子」

「なんですか? そのちゅうにびょうとか言うのは」

「君、村雨くん、年は?」

「私は13歳です」

「やっぱりねぇ。そんなお年頃なんだ」



 頷きながら、一つ試してみたい事を思いついた。



「えぇーっと。それは置いておいて、鉛筆とかってないよね?」

「えんぴつとは?」

「筆。筆って無いかなぁ?」

「あちらに」



 そう言って、村雨くんが指さすところに目を向けると、小さくて細長いテーブルのようなものが置いてあって、その上に硯がある事に気づいた。


 座って、そのテーブルに向かう。

 墨汁なんて気の利いたものは無い。墨をすれと言うことらしい。

 水を移して墨をすり終えると、横に置いてあった紙に小筆を滑らせてみた。


 私、ある程度の絵心はある。

 描いたのは、セーラー服姿の女の子のイラスト。髪型は三つ編みにしてみた。



「どう? こんな女の子」

「おおぅぅぅ」



 村雨くんは目を真ん丸にして食い入るよう見ながら、感嘆の声を上げた。



「これは、何と言いましょうか、見た事も無い着物に髪型ですが、何かこう、胸の奥が疼きます」



 村雨くんの反応は興奮しているだけでなく、狼狽しているようにも見えて、ちょっと面白い。

 きっと、初めて危ない画像を見た男の子の反応はこんななのかも知れない。


 では。と、私はさらに筆を走らせた。

 今度は水着姿のツインテールの女の子。胸は巨乳にしてみた。



「どう、こんなのは?」

「こ、こ、これはほろんろ着物を身に着けておられないのれは?」



 顔が真っ赤で、ちょっとろれつが回っていない。



「はっきり言って、萌えぇぇぇでございます」

「萌えですか?

 この時代にも、そんな言葉を話す人がいるなんて、意外でした」

「これ、いただくわけにはまいりませんでしょうか?」

「いいですよ」

「ありがとうございます。

 家宝にいたします」



 そう言って、村雨くんは思いっきり頭を下げた。

 やはり、この子も二次元の女の子を好きになる素養があるらしい。


 なんて、村雨くんを相手に現実逃避中だった私の耳に、切迫感満載の声が聞こえて来た。



「殿ぅぅぅ。

 蟇田ひきたの軍勢が、押し寄せて来ております」

予約更新しました。

ブックマーク入れて下さった方、ありがとうございます。

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