私をむちゃくちゃにして!
私たちが連れて行かれたのは、関所の門の横に造られたちょっと広い広場のような場所。
四方は木で造られた柵で囲まれていて、唯一ある出入口の左右には長い木の棒を持った門番が控えていた。
そんな場所の真ん中に、私と村雨くんは正座で座らされると、その前にいかつい一人の男が腕組みをして現れ、長い木の棒を持った何人もの男たちが私たちの左右を取り囲んだ。
少しでも変な素振りをしたら、木の棒で押さえつけられそうな雰囲気。
着物の生地一枚で地べたに正座さられているので、私としては膝が痛くて、じっとしていられなくなるのを堪えている。
横の村雨くんも表情を変えず、じっとして動きも見せない。
村雨くんの場合はもしかすると、恐怖とか緊張のあまり、思考が停止して完全に固まっているのかも知れない。
「お前たちにたずねる」
正面の男はそう言うと、私たちに色々と質問を浴びせてきた。所謂尋問。
「どこから、どこへ行こうとしている?」
表情すら動かさず固まってしまっている村雨くんを相手にしていないのか、女の私なら脅せば本当の事をぽろりと言うと思っているのか、分からないけど、質問してきた目の前の男の視線は村雨くんではなく、私に向けられている。
「えぇーっと」
私はその問いに返す言葉がない。
具体的な場所を目指している訳でもないし、それ以上に私はこの時代の地名を知らない。
「か、か、駆け落ち?」
小首を傾げて、疑問形で答えてみた。
目の前の男は、きょとんとしている。
「お、お、親に結婚を反対されて、遠い地を目指しているところなんです」
これなら納得してくれる?
そんな気分で、もう一度小首を傾げてみた。
男は顎の辺りをさすりながら、沈黙している。
私の言った事を頭の中で吟味しているらしい。
「名を申してみよ」
「は、は、はい。
ありすです」
「なんじゃ、その妙な名は」
「名を偽るにも、もっと良い名があるであろう。
そちは我らが探し求めている浜路姫であろう」
完全に疑われているじゃない。まあ、当然のような気もするけど。
どうしたらいいのかな?
そんな時、私の脳裏にあるシーンが浮かんできた。
山伏に変装した義経一行が安宅の関で、義経でない事を偽装するため、弁慶が義経を打ち据えた。
そう。これよ。これ。
弁慶は疑いを晴らすため、義経を打ち据える手に手加減を加えなかったと言う。
ある意味、本気でむちゃくちゃにいたぶった。
「浜路姫って、誰なんですか?」
怪訝な顔つきで、小首を傾げてみせてから、言葉を続けた。
「そもそも、私が姫な訳ないじゃないですか。
ただの通りすがりの恋する二人ですよ」
そこまで言ってから、視線を横の村雨くんに向けた。
「ねっ!」
そう言って、小首を傾げてみせた。
「嘘を申せ」
目の前の男は当然だけど、全く信じてなんかいない。
そう。ここで、村雨くんに私をむちゃくちゃにいたぶってもらう。
痛いのは嫌だけど、殺されるよりはまし。
それに、華奢な体の村雨くんだけに、彼が本気で私をいたぶっても、それほど大した事にならないはず。
そんな読みで、村雨くんに言った。
「信じていないみたいだから、姫にはできないような事をやってみせてあげてくれないかな」
「どんなことですか?」
「私をむちゃくちゃにして!」
「いいんですか?」
村雨くんの言葉に私が頷くと、村雨くんは立ち上がった。
そのまま私を蹴り飛ばすのかと思えば、私の背後に回り、私を背後から抱えるようにして、立ち上がらせた。
きっと、立ち上がったところで、殴って来るとか?
そう思っていると、背後から村雨くんの手が、私の胸の辺りに巻き付いてきた。
な、な、なに?
予想外の村雨くんの行動に戸惑っていたら、私の耳元に村雨くんの上ずり気味の声が聞こえて来た。
「いつもの夜のように、むちゃくちゃにして欲しいんだって?」
えっ? 意味わかんないんだけど。
と、思う間もなく、着物の上から村雨くんが私の胸を鷲掴みにした。
ひっ!
その次の瞬間には、村雨くんの右手が着物の隙間から滑り込んできて、直接私の胸を触り始めた。
何をしてんのよ。この人。
目の前の男は目が点になって、周りの男たちはざわめきだしている。
「後ろから思いっきり突きまくって、むちゃくちゃにしてやるよ」
村雨くんの声が耳元で聞こえて来た。
ひっ! ちょ、ちょ、ちょっと待ってよ。
こんな人前で。いや、その前に、なんで私がこの村雨くんと。
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