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1_09:鳥籠のお姫様のお話・4
石畳の上に足を投げ出して座っている彼女は、黒の中、目を瞑っていました。
それはいつもと同じ、変えようにも変えられないものなのですが、今日は少し違いました。
隔離された、真っ暗闇の、鳥籠の中。
目を瞑る彼女の視界は、赤で埋め尽くされています。
次々と移り変わる場面の中で、耳をつんざく悲鳴と、怒号。
きらめく銀に、散っていく、赤。
聞こえるはずのないものが、見えるはずのないものが、鳥籠中に溢れます。
これは、記憶の再現。
彼女が心を壊した、その理由。
望んでいない現象に、彼女はただ耐えることしか出来ませんでした。
頬を伝う感触の、それが、せめて赤であればと。
全て流れきってしまえばいいと、そう、それだけを願いながら。