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ロークアンディルテは檻の中  作者: 紺野 柚季
1・夢の中の彼女のお話(えせ童話風)
4/12

1_04:鳥籠のお姫様のお話・2

 鳥籠の中の彼女は、黒の中でぼんやりと座っていました。


 音も、温度も、色彩もない場所で、ひどくゆっくりと、時間だけが過ぎてゆく中。

 不意に、暗幕の向こう側から、カツン、カツンと何かが近付いてくる音が響きます。


 カツン、カツン。

 カツカツ、カツ、コツ。


 その何かは、鳥籠に向かってまっすぐ近付き、暗幕の前で立ち止まったようでした。


『***』


 何かは何かを口にしました。

 ですが、彼女には分かりません。

 いえ、正確に言えば、“知っていたけれど、分からなくなってしまっていた”のです。


『***、*************、******』


 なおも聞こえる音に、彼女はなんの反応も返すことなく、ただただぼうっと宙を眺め続けます。


 やがて、何かが苛立ったように暗幕の中に入って来ても、彼女は身じろぎひとつしませんでした。



 * * *



 鳥籠の内側、彼女に唯一与えられた場所。

 静寂の中に入り込んできた異物は、それから長い時間、苛々と、好き勝手に暴れてゆきました。


 衝撃、反動、衝突。

 振り上げられたものが振り下ろされて。

 体には確かに何かが触れているのに、彼女の感覚はどこかに置き去りにされたままで、他に何を感じることもありません。


 与えられる、分からない行為の中、彼女は微かに首を傾げて。


 ああ、ここには、くすぐったいようなあの感覚は有り得ないのだと。

 ただそれだけを、ようやく、ほんの少しだけ、分かったのです。


 それがどこにあったのかは、分からないまま。



2015/01/15 投稿

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