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ロークアンディルテは檻の中  作者: 紺野 柚季
1・夢の中の彼女のお話(えせ童話風)
3/12

1_03:楽しさ、喜び

「……あ、あそびにいこー!」

「まって。あめだから、そとはだめ」


 ある日。

 『弓使い』が外に出ようとするのを『魔法使い』が止めました。

 窓の向こうの外は霞んでいて、何やらザーザーと音が聞こえます。

 『魔法使い』がそう言っているから、きっとそれが“雨”なのでしょう。

 そして、雨というのは外に出てはいけないものなのだ、とロッテは思いました。


 家の中で出来る事は限られています。

 家の中で走り回ると怒られるので、羊ごっこは駄目。

 それに、昨日やっとお医者様から遊んでも大丈夫だと言われた『剣士』の体調もあります。

 結局、さほど動きの激しくない、妖精探しをすることになりました。


 先生たちの所に行って帰って来た、『勇者』の小さな手に握りしめられた、大きな袋の中身はクッキーで、妖精の形のものがいくつかと、そしてそれを捕まえる狩人の形のものが一つ入っています。

 そして、妖精を引いた子達は決められた範囲の中で隠れ、それを狩人を引いた子が見つけるという、単純な遊びです。


「そとにでちゃだめだからね」


 『勇者』が『弓使い』に言います。


「そっちだって、たかいところはだめなんだから!」


 『弓使い』はそれにムッとして返し、さらに口を開こうとしたところで、『魔法使い』が小さく溜め息を吐きました。

 すると、二人してハッとしたような顔をして、『魔法使い』に向けて言います。


「あ! まほう、つかっちゃだめだからね!!」


 強い口調で言われた『魔法使い』は、めんどくさそうに、はいはい、と返したのでした。



 * * *



「なにしてるの?」


 最初の鬼が『勇者』に決まり、その場でもぐもぐとクッキーを食べた後、ロッテは『魔法使い』について狩人から隠れる場所を探していました。

 ですが、何故か『魔法使い』は図書室のソファに座り、膝の上で本を開いたのです。

 ロッテが問うと、『魔法使い』はちょいちょい、と手招きし、隣にロッテを座らせました。


「???」


 隠れなくてもいいのか、と、ロッテは首を傾げます。

 ソファは入口のすぐ横、ちょっと覗き込めばあっという間に見つかってしまうような所にあるのです。


「……。みえなくしてるから、だいじょうぶだよ」


 ロッテが首を傾げて『魔法使い』を見つめる中、『魔法使い』は何やら小さく口を動かしたかと思うと、そう言いました。


「まほう、つかったらいけないんだよ?」


 ロッテはおろおろと、先程『勇者』と『弓使い』が言っていたのと同じ言葉をかけます。

 すると、『魔法使い』は小さく笑って、ロッテの頭を撫でました。


「だいじょうぶ。ばれなければいいし、みんなもやってるから。『弓使い』はあとでせんせいにおこられるだろうけどね」



 そうして始まった一回目の妖精探しは、最後に『勇者』が『剣士』を連れて図書室に入ったことで終わりました。



 * * *



「ロッテ、いっしょにかくれよう!」


 二回目。

 『魔法使い』が狩人役になった為に、クッキーを食べ終わってからもその場でぼうっと立っていたロッテに、『弓使い』が声をかけました。

 それに一度頷いて、手を引かれるままにぱたぱたと走ります。


 しばらくあちらこちらを彷徨って、キッチンの近くまで来た所で、『弓使い』はぴたりと立ち止まりました。


「どうしたの?」


 ロッテが問うと、『弓使い』はうーん、と考え込んで、そして、こう言いました。


「わたし、ちょっとおそとにでるけど、ロッテはどうする?」


 その言葉に、ロッテはまた落ち着きを失くしました。

 ですが、『魔法使い』が、みんなやっている、と言っていた事を思い出して、ふるふる、と首を横に振るだけで返します。

 ああ、でも、どうしましょう。

 じゃあまた、と言って元気よく勝手口から出て行く『弓使い』の背を、ロッテは途方に暮れて見送ります。

 たしか、『魔法使い』は、『弓使い』は怒られるだろう、と言っていました。

 けれど、ロッテは自分が『弓使い』を止めることは思いつきません。

 だって、それはいつも、『魔法使い』や『勇者』、『剣士』などの、ロッテではない人たちの役目だったからです。


「……『魔法使い』ー」


 眉を下げて困り顔で、ロッテはとうとう『魔法使い』を頼る事にしました。


 『魔法使い』が狩人である事も忘れて。

 まず『勇者』か『剣士』から探すべきだとは、微塵も思い浮かべずに。



2015/01/15 投稿


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