1_01:鳥籠のお姫様のお話・1
attention!
・童話風にしようと頑張って、でもなんか違うような、そんな小説です。
・多分10話辺りからご都合主義というか、メタっぽくなります。
お気を付け下さい。
また、『ロークアンディルテ』前半部のあとがきは基本的に投稿した年月日を記載しているだけです。
ロークアンディルテは檻の中。
温度の無い、暗く静かな場所に、彼女はいました。
もうずっと長いこと薄汚れたまま、自分が何も分からない事も分からずに、ただただぼんやりと虚空を見つめるだけ。
たまに、誰かがやって来て彼女に嫌な事をするのですが、彼女はそれが嫌な事にすら気付きません。
さてさて。
踝まで伸びた淡い紫色の緩やかな髪に、愁いを帯びたような灰青色の瞳を持つ彼女は、元はとある国のお姫様でした。
幼い頃からとても美しく、とても心優しかった彼女は、国中のみんなから、それはそれは愛されていました。
しかしある日、とても悪い、“魔王”と呼ばれる恐ろしい魔物が、彼女の国を自分のものにしてしまったのです。
彼女の両親、王様と王妃様は真っ赤な大輪の花をのこして消えてしまいました。
真っ白で光に溢れた町は、一日にして、赤と黒にその色彩を変えました。
彼女の世界が彼女だけになって、全てを夢のように感じる中。
少しの躊躇いも無く、むしろ笑みを浮かべてそれを行っていた魔王は、さいごに見つけた彼女の事を気に入ってしまいました。
目の前で何もかもを失くした彼女は、そうして、暗幕の中へと閉じ込められたのです。
外れない首輪と鎖をかけられ、飾り気のない鳥籠の中。
美しい姿と、ひび割れ、砕けてしまった心だけになって。
それから、何年が経ったでしょうか。
彼女は、けして座り心地が良いとは言えない石畳に足を投げ出し、壁に寄りかかって、いつも座っていました。
時間も存在も曖昧な中、何も分からないままで、ただただぼんやりと。
そして彼女は、夢を見るのです。
分からないけれど、きっと、とても、素敵な夢を。
2015/01/14 投稿