恋バナはとしよりも大好き
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恋愛 お小遣い稼ぎ 使い捨てコンタクトレンズ
「お父さん。お母さん。食費です」
「あら。ひいちゃん。良いのに」
にこにこ笑う彼と彼女は私の義父と義母である。
元家主ともいう。実の親とは目下絶縁中。
かつての家族としては義理の兄がたまに訪れる程度だ。
色々あって私は彼らを親と思って接しているのであるが二人にとってはまだ気恥ずかしいらしい。
二人のお子さんは去年までは同じアパートの管理人室にいたのだけど何かあって住んでいないみたい。
順子ちゃんと和代さんっていう人たちだったみたい。
会ってみたかったな。
「『お小遣い稼ぎ』なんてしなくていいから、『大学受験』や『就職活動』に専念してね」
「はい。お父さん」
老夫婦は朗らかに笑う。本当にいい人たちだ。
私にはもったいない。
「『紅茶』、いいのが手に入ったの」
「いただきます」
ニコニコ笑うお母さんはとっても小さくてかわいいお婆ちゃんだ。『ニキビ跡』もないしわだらけの顔だけどすごくステキな笑顔。
「こんど、『ケータイ』買ってあげるね。お父さん」
「つかわないと思うが」
そういうお父さんに私は告げる。
「ダメ。最近は老人の孤独死増えているのよ」
「孤独ではない」
私にはムキになってくれるのがうれしい。
「ところで、あなた『恋愛』の話とかしないの?」
急にお母さんにいわれて私は紅茶を噴いた。『使い捨てコンタクトレンズ』、どこ行った?! どこだ?!
今日は眼鏡をつけているが、落とすといろいろ困る。
「いろいろ助言できるぞ」
「お父さんたちのそれってただののろけだからッ?!」
あと、私と茂宮はそんな関係じゃないッ?!
ムキになって叫ぶ私をお姫様が迎えに来た。
余計騒ぎになったのは今となっては笑い話だ。




