女主人公を巡って親友ポジ女どもが争う展開を萌えと認識して男作者が好むが、実際の女性心理とは相反する
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「と、思うのよね」
「何が『と思うの』かしら。市子さん」
漫画を読みつつ問いただすと彼女は長々とした妄言を吐き出した。
「いや、こういう安っぽい男の子向けのマンガとかライトノベルだけど女主人公を巡って親友ポジ女どもが争う展開を萌えと認識して男作者が好むが、実際の女性心理とは相反する現象について思う事がないかしら」
「むしろ『通信』『高校』で『大学受験』や『中国留学』を目指す『勉強』の合間に『コンサルティング』業務に励み、異世界の『インターネット』『接続』事業や『レンタルサーバー』運営をがんばるあなたに漫画を読む暇があると思わなかったわ」
私は市子のマンションの寝台にだらしなく横たわり、PCをものすごい勢いでたたく。たたくって言ってもキィボードね。間違ってもキーボードをクラッシュしているわけではなく、書類を作っていたりする。
わたしは才女である市子とダべリングに興じている。
ダべリングしながらもケーブルテレビから流れる健康『ピラティス』体操も欠かさない。
「ひぃちゃん。『大学受験』は今の内。待ったなしなんだぞ」
「わぁっているって」
「わかっていないだろ。うりうり」
ノートパソコンをいったん閉じて私の両頬をつつく彼女は私の親友キャラである。
ヤンデレ乙女ゲームの主人公として生まれた私のために進学をあきらめて通信制高校に通う私に付き合ってくれたそんな大切な友達だ。
「ただで国公立にいくだけの学力は維持しないと大学でヤンデレ乙女ゲームの主人公になっちゃうかもよ」
「うげ」
いくら多彩な舞台を用意する開発元でも大学が舞台のゲームはないと思いたいわ。たいてい中学や高校か異世界だし。
一応、一度その危機は異世界に飛ぶ能力やその他の友人に恵まれて回避したが、別ゲームの主人公になっちゃう可能性もあるとは市子のお話。
「そういえばこの間、お姫様に名前がついていたな」
「モブじゃなくなったのかもね」
「茂宮は? 物部は?」
「あの子たちは『モブA』『モブB』が変形したものと推察できるわね」
カタカタとPCをたたく彼女は『開発者』の悪霊が一時憑いていた経歴がある。
「でも、何かが変わって、あなたとそばにいる。それでいいんじゃない?」
うん。
今の通信制高校のみんなは良いヤツ揃いだ。
先生はちょっとアレだけど誠実だし、おっちゃんの見た目は最初驚いたが男気あるし、おばちゃんは身を張って娘みたいな年頃の私たちを気遣ってくれる。
他にも休学が多い人、顔を見たことはないけど成績表には出てくる子と多彩にわたる。
「通信制高校って、変な人揃い……って言ったら叱られるんだけど」
「うん」
「いいやつらだよね」
「ね」
笑い合う私たち。
「そうそう。今度のゲームは『七つの大罪』にちなんだゲームになるんだけど」
「??」
「わたし、『怠惰』のキャラのオファー来ているんだけど、受けていい?」
そういって笑う彼女に私は全力で枕を投げた。
怠惰だけにやる気なし。
まさに市子に適任である。
「てか、あんたはまだ『開発者』どもと関わりあったのか?!」
「追い出しはしたけどメールは来るわよ~」
時々市子の考えることはわからないが、それでも悪いヤツではない。
そう信じたい。たぶん。
「少なくともお姫様みたいに湯上りに胸を揉んだりはしないわねぇ」
「まて市子さん。なぜ貴様がそんなことをご存じなのかしら?!」




