覗き魔疑惑を受けたヒーローはヒロインと結ばれる。なわけがない。
インターネット 接続 体脂肪
大学受験 高収入 ピラティス
Tシャツ オリジナル 紅茶 お小遣い稼ぎ
「『ピラティス』キック!」
ぐえっ。
私の華麗なるポージングを兼ねた蹴りは倒れた彼の鳩尾に"ついげきのグランドヴぁいぱ"を解き放った。
もはや動かぬ『体脂肪』の塊である。惜しいイケメンをなくしたわ。
なお、股間は燦然と降り注ぐ謎の光さんによってガードされる。
「『インターネット』『接続』して兵隊さん呼びましょう」
通信魔法を必要としないネット回線は辺境のこの国では結構重宝がられている。
というか、服を。幸いにもバスタオルを巻いたままの入浴で文句を言われる宿ではないが。
さくっと仲間たちを呼び、股間の粗末なものをギリギリタオル一枚で隠したイケメンに事情聴取。
"こんなかわいい娘が女の子のはずがない"と書かれた『オリジナル』『Tシャツ』を羽織らせたイケメン。実に残念な格好だが致し方ない。
「ふむ。魔法『大学受験』を控えた受験生だったのか」
取り上げた身分証を見ながらおっちゃん。このおっちゃん、語学堪能で早くもこっちの世界の文字が読める。
「盗撮は『高収入』の『お小遣い稼ぎ』だからね」
市子が言うには女性が女性を盗撮することもあるらしい。……今度から気を付けよう。
茂宮と物部はイケメンの顔に髭を書いているけど何をしているのやら。
おばちゃんは早くも説教開始を今か今かと舞っている。待っているんじゃない。踊っているのだ。おばちゃん落ち着いて。
イケメンは目覚めると事情を説明しだした。
曰く。自分は痴漢ではない。
そこは無視するとして、着の身着のままならぬ全裸だったのは?!
私の氷のような視線に耐えかねたのかナントカ謝罪の言葉を口に出す。
謝罪したな。つまり罪を認めたということだな。殊勝な奴だ。豚箱いってこい。
「ブタバコとはどういった代物でしょうか」
お姫様曰くこの世界に牢屋はない。あるとしてももっと高貴な人が修道院に閉じ込められるとかそういったことらしい。
「つまり、即刑罰?」
「です」
お姫様容赦ない。
「女性の敵には相応の罰を」
にこやかにおっしゃる彼女だが目が笑っていない。
イケメンは名も名乗らずに処分されるところを、とりあえず物部と茂宮のとりなしで一命をとりとめた。
「股間はちょん切ってもいいよ」
「だな」
同じ男とは思えない非情さを彼らは示した。
「だが、私はつかまらぬ! 何故ならばッ?! 大怪盗エーロスとは私のこと……」
「つまり変態だってことかぁああっ?!」
私の投げた紅茶の箱が華麗に奴の頭にヒットした。




