男なんてッ?! いなくても生きていけるよねッ?!
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どき。どき。
私は高鳴る胸を無理やり抑える。
ううう。そんなに大きな胸でもないのに。
男は胸は大きいほうが良いのか。
というか顔立ちとかあいつの好みなんだろうか私は。
貧乳は貧乳でも子供しか萌えないとか言われたらどうしようか。
大丈夫だ。『スキンケア』はばっちりしたし、美容、『ダイエット法』のサイトも見てこの日のためにばっちり化粧もした。
大事なことだから二度でも三度でもボディチェックした。
『高収入』のバイトはないけど、『貯金』していた『懸賞金』も使って新しい私服も買った。
後は彼。
陸上部の彼である『茂宮栄一』が『ホンダ』の『バイク』に乗ってくるのを待つだけである。
なんだって? 今更聞くな。今日はデートなんだッ?! 言わせるな恥ずかしい。
モブのくせに大層な名前をいつの間にか名乗りやがって。
一連の事件を経て言葉なくして意思疎通を行えるほどに私たちは仲良くなれた。
そう思っている。思っていた。
「そう、そう思っていたのよ! 市子ぉ!!」
「な、な、なによ。ひぃちゃん」
よほど私の表情はどんよりと曇っていたのだろう。
スタバの珈琲を飲みつつ、『インターネット』『接続』して高速でキィボードをたたく市子に私は干からびた唇を動かすのがやっと。
「茂宮君と何かあったの」
びくん。
「な、な。な……」
目頭が熱くなって吐き気がする。あ。じぶんだ。
「茂宮、『お前のことは親友と思っているが』って」
「あ」
察した彼女に私は詰め寄る。
「そ、その。変な悪霊に囚われて迷惑かけてごめ」
「市子ッ?!」
私は思いっきり彼女をヘッドロック気味に抱きしめた。
「そ、その、あの。ひぃちゃん。マジ落ち着いて。く、くくくるしい」
「市子ッ?! いっちゃん~!?」
眼鏡使用者の例にもれず、私も眼鏡とコンタクトレンズを併用する。
特に異世界転移の力を得て以降は多用することが多い。
「『子供のころに眼鏡の女に苛められて以降、眼鏡をつけている女はどうしても異性と見ることができない』って言われたんだ」
理不尽すぎる理由でしょう市子?! 命がけの冒険を何度も超えてきたのに!
「な、な、なによそれ茂宮。なんのジョークを言っているの」
「市子ッ?!」
混乱する彼女と怒り沸騰の私。
市子のタブレット端末のコードが飛び、スタバは荒れ模様。
「眼鏡の女と付き合うくらいならと付き合いだしたと言われて、『彼氏』を紹介されたの」
「……マジ?!」
ひくつく市子に濁流のように涙を流す私。
「私は男より魅力がないのかぁああああああああああああああっっ?!」
「……そ、その。あの。大丈夫。あなたヒロインだから探さなくても向うからヤンデレが寄って」
「いやに決まっているでしょう?! まともな男が物部だったのに?!」
???な顔に急になる市子。
「だれ物部って?」
「茂宮の彼氏」
意外と男前だったわよ。
「……」
「お願い。黙らないでッ?!」
ヒステリー気味の私に何を言っていいのかわからない様子の市子。
「そ、その今日は私が驕るから」
「どうして私は男運がないのよっ?!」
荒れに荒れる私に優しい市子。
もうこうなったら私はエスに走る!?
「やめ。いくら私があなたの余りものヒーローを彼氏にする設定でもそれは断る?!」
「うっさーい!?」
もはや女でも構わぬ。
錯乱しきった私と市子は騒ぎに騒いでスタバを追い出された。
乙女ゲーム小説の読者はガールズラブ展開は望んでいない。